某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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黄泉還る 急

鵜堂刃衛の復活を告げたとき、緋村剣心と薫さんは酷く困惑し、苦しげな表情を浮かべた。それもそのはずだ。二人にとって鵜堂刃衛は明治以降、鳴りを潜めていた人斬り抜刀斎の姿を呼び起こした相手であり、血に沈んだ兇気の孕んだ剣客だ。

 

「(……だからって、わざと私と薫さんに誘き出す役目を押し付けるのは良くないと思うんです。斎藤さん、この前のしとりを初めてあんなに酷く叱った話の事をまだ怒っているのでしょうか)」

 

「景さん、安心してね。貴女だけは逃がすぐらいには時間稼ぎをするから」

 

「わ、私も頑張ります…!」

 

人気の少ない函館山の中腹に私の震えた声が響く。

 

帯に差していた懐剣を握って構えるも「景さんのへっぴり腰で刀を振るえるとは思えないけど。ありがとう」と貶しているのか褒められているのか。

 

どちらなのか、全く分からない言葉を貰った。

 

左之助さんも緋村剣心も隠れて見守っているとは言いましたけど。黒笠と言われていた暗殺者の鵜堂刃衛には見えている可能性だってあります。

 

「うふ。うふふふふ、眼鏡の女と抜刀斎の女が俺の前に立っているとはどういうことだ。お前達の後ろの藪の中に隠れた奴らは出てこないのか?」

 

「出るに決まってんだろうが」

 

「薫殿、糸色殿、囮役申し訳無いでござる」

 

「ううん、平気だったわ。景さん、私達は此処から離れていましょう」

 

薫さんの言葉に頷き、藪の中に向かおうとした瞬間、妖しげな気配を纏う木乃伊の様な風貌の男が現れ、私と左之助さん、薫さんと緋村剣心の四人は鵜堂刃衛ともう一人の男に挟み込まれてしまう。

 

だらりと蛇のように伸びた舌を揺らし、白い吐息を吐いて私と薫さんを見据える男の正体は一目見たときに気が付いてしまった。

 

元新撰組隊士紫鏡だった成れの果て、あるいはと呼ばれ、人を斬るために朽ちた身体で動く「魔物」に身体が強張り、竦んでしまう。

 

「ブッた、ブッた、ブッた斬るウゥゥゥゥッ!!」

 

「うふ、うふふ。その男は地獄の底で再会した新撰組時代の友だ。人斬り抜刀斎、お前も聴いたことはあるはずだ。俺と同じく新撰組を逐われた」

 

「…まさか、その男は紫鏡か!?」

 

緋村剣心が振り返ると同時に駆け出してきた紫鏡が私達を斬り殺そうとした刹那、蛮竜の巨大な刀身が彼の逆手に構えた刀を受け止め、火花を散らす。

 

「この場所に女を招き入れたのはお前達だ。死ぬ気で守りきらねばお前達の大事なモノは無惨に惨たらしく刻み殺してしまうぞ!!」

 

「チッ。あの木乃伊野郎はオレが相手する!」

 

「左之、強さは斎藤並みだ!」

 

「尚更、負けられねえなあ!」

 

私と薫さんを中央に添えて、二方向で斬り結び始めた四人に戸惑いと恐れを抱きながら薫さんの傍に寄り添い、いつでも懐剣の結界を張ることが出来るように、不安と気持ち悪さでボヤける視界の中、しっかりと意識を繋ぎ止める。

 

 

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