もはや剣術とは呼べない獰猛な獣の様に身体を前傾姿勢に屈め、身体を引き起こす勢いに二刀を重ねて放り投げる紫鏡の業───「禿鷲」は蛮竜の鎬を削り、左之助さんの身体を僅かに退ける。
本来、投擲した武具は手元に戻ることなく地面に落ちるか破壊されるのが定石ではあるけれど。紫鏡の二刀は縦回転したまま彼の手に戻り、仕切り直しになる。
「おれぁ斬り足んねえェ~~ッッ!!!」
「この木乃伊野郎、鎌鼬かテメェはっ!」
蛮竜の振り下ろしの一撃を受け止め、鍔迫り合いに移行する左之助さんと紫鏡の二人の近くに抜き身の刃筋と刃筋と峰の真逆に成った逆刃刀をぶつけ合う。
鵜堂刃衛の攻撃を受けず、往なし、躱すことに集中し、逆刃刀を横一文字に振り抜き、正確無比な返し技──飛天御剣流「龍巻閃・旋」を鵜堂刃衛の背面に叩き込み、瞬時に二撃目の錐揉み回転を加えた「凩」から、脳天を叩き割る程に力を込めて放れた縦回転の「嵐」へと攻撃は連携し、先程の苦戦など帳消しにしてしまう強さを見せつける。
「飛天御剣流…!」
「馬鹿が、見飽きた攻撃だッ!!」
上空へ飛び上がった緋村剣心を迎撃するが如く放たれた牙突や狼牙には遠く及ばない只の右片手突きと、飛天御剣流の業であり緋村剣心の最も得意とする「龍搥閃」が衝突し、お互いの刀を弾き飛ばす。
「左之!」
「おう!」
刹那、背中合わせになりながら身体の向きを入れ換えた緋村剣心と左之助さんは対戦していた相手を変えるように動き、それと同時に緋村剣心の構えが正眼になり、九つの龍が牙を剥き、紫鏡の身体を穿つ。
「九頭龍閃…!」
「あぎゃあッ!?…うひひひひっ!たまんねぇ!」
「まだだッ、紫鏡────ッッ!!!」
「おおおおおおおおおぉぉっ!!!」
鵜堂刃衛が自分の身体を支配する痛みに恍惚とした笑みを浮かべ、ぶるりと打ち震えていた紫鏡に叫ぶ。───けれど。すでに彼の眼前に飛び込んだ緋村剣心が、二度目の九頭龍閃を叩き込み、更にもう一度力強く踏み込み、三度目の九頭龍閃を叩き込んだ。
───二七頭龍閃である。
凍座白也を一時的に倒した業であり、その破壊力は凄まじく自他にダメージを受けても悦楽を見出だすあの紫鏡の意識を完全に断ってしまった。
「さて、こっからはオレとアンタだぜ」
「……うふ、成る程、先程の抜刀斎の腑抜けた弱さはこのためだったわけか。技の速さで競えば紫鏡は抜刀斎に劣る。だが、お前に俺を殺すことが出来るのか、小僧!」
「おう。お前なんざ直ぐにブッ殺して閻魔様んとこに送り返してやるよ」
左之助さんが鵜堂刃衛に挑む。