緋村剣心によって手足を縛り上げられた紫鏡は未だ気を失ったまま悦楽の笑みを浮かべて白目を剥いている最中、左之助さんと鵜堂刃衛は円を描くように間合いを見計らい、お互いの隙を窺っている。
「ヌゥンッ!!」
「ラアッ!!」
掬い上げるように振るわれる蛮竜を一刀で受け止め、ギリギリと刀身の衝突で火花が散り、二人の間合いと制空圏が重なり合う。
一歩でも臆せば死ぬ。
その生死のギリギリを追求する狂気の沙汰を楽しみ、更に力強く鵜堂刃衛は打刀を押し込め、左之助さんの怪力を上回る。
けれど。左之助さんも負けじと蛮竜の柄を強く握り締め、鵜堂刃衛を押し返した刹那、左之助さんは半身を後ろへと転じるように刃筋を滑らせ、鵜堂刃衛の胴体を斬る。
───否、斬った。
確実に斬った筈なのに鵜堂刃衛は出血は愚か痛みを感じている様子もなかった。地獄の門を抜けて戻ってきた故、不死性を有しているのかと不安になりながらも左之助さんに声援を贈る。
「左之助さん、がんばって下さい!」
「左之、相手は死人でござる!生半可な斬撃は通じぬ、拙者の様に攻撃を受け止めて回復する前に叩き伏せてしまえ!」
「左之助、負けたら承知しないわよ!」
「うふふ、随分と慕われているな」
「当たり前だな!」
何度目か分からない衝突の末、蛮竜が鵜堂刃衛の持つ刀をへし折り、その身体を斜めに切り裂き、血ではなく瘴気を噴き出して鵜堂刃衛は仰向けに倒れ伏す。
「うふ、うふわははははっ!!人斬り抜刀斎に殺されるかと思ったが、こんな小僧に力負けした挙げ句の果て、獲物さえも砕かれるとは愉快だ!!!」
ゆっくりと緋村剣心は大の字に倒れ伏したまま笑う鵜堂刃衛に近付き、何かを話し合い始める。ここだと上手く聴こえないけど。
おそらく地獄の門に関わることを聞いているはずよね。北海道にあればいいいんですが、お腹の子に負担を掛けてしまうのは申し訳ないです。
それにしたも左之助さんの勝つところが見れて私は嬉しい。紫鏡は未だに気を失っているものの、いつ、また、目を醒ますのか分からない。
今の内に聞けることは聞いてしまうべきです。
「左之助さん、お疲れ様です」
「嗚呼、死なないヤツを動けなくするのは流石に疲れた。斎藤達が来るのを待てば良いんだが、アイツらいつになったら来やがるんだ」
「確かに、斎藤にしては遅い」
彼の言葉に同意するように緋村剣心も頷き、私と薫さんはまだ安全じゃないかも知れないという事実に苦笑し、どうするべきかと二人に訊ねる。