無事に警察署へと向かった鵜堂刃衛と紫鏡の二人の事を考えつつ、私を狙う理由も聴けていなかった事を思い出して、少し気持ちが重くなる。
怖いから会いたくないんですよね。
鵜堂刃衛はまだ話したら答えてはくれそうだけど、紫鏡は明らかに私やしとりをどうやって斬ろうかと考える顔付きだったから出来れば直ぐに地獄の門を通って帰って欲しいです。
「左之助さん、お味噌汁の味見をお願い出来ますか?その、しとりに頼んだ鰹節を使いすぎて、少し濃くなっている気もするんですけど…」
「ああ、普通に美味いぞ」
「ん!しとりもほしい!」
「フフ、熱いから気を付けてね?」
小皿に注いだお味噌汁をしとりに手渡し、ゆっくりと息を吹き掛けて冷ますしとりの可愛い姿を模写する。最近、忙しくて漫画の続きも掛けていませんから、あまり私達を巻き込まないでほしい。
ああ、絵物語や絵草紙と呼んでいたのに、いつの間にか漫画と呼びそうになってしまった。やはり連日で大変な事が起こりすぎて。
少し体調が優れませんね。
「……景、本当に直ったんだよな?」
「え?あ、ああ、治りましたよ。ほら!」
割烹着を着たままフンスと胸を張るように力瘤も出来ない細腕を力ませる。しかし、左之助さんの視線には不安と焦燥が混じっている。
「左之助さん、ずっと一緒に居ますよ。私は封印の巫女になるわけではありません。確かに、妖怪や錬金術師に狙われていますが、きっと大丈夫です。じゃあ、この子が生まれたら皆でイギリスに行きましょう!」
「英国か、確かオッサンの知り合いがいるんだったな。しとりの着物の礼もせずに放置するのも悪いしな、景の言う通り腹の子が生まれたら会いに行くか」
「えぇ、会いに行きましょう」
その頃はまだ「エンバーミング」も開始していないはずですし、お礼と可愛くて素敵なしとりに似合うお洋服を直接仕立てて貰える最高の機会です。
189X年という曖昧な年で、今はまだ明治十六年。
この子が生まれるときは明治十七年になりそうなのでしとりも四歳で、もっと可愛くて素敵な女の子になって……うぅ、左之助さんと同じくお嫁さんに行って欲しくない気持ちが頭の中に押し寄せてくる。
「やっぱり何処か悪いだろ」
「そんなことありませんよ?」
「一回、オッサンか恵のところでよ。見て貰った方がオレは良いと思う」
「……分かりました」
左之助さんの勘違いだと思うんですけど。
まあ、大好きな人の言葉です。無碍にすることは絶対に出来ないし、しとりと左之助さんのためにも私は健康を第一に考えなければいけない。