神谷道場の真ん中に正座する私を無言で見下ろす斎藤一と高荷さん、そして大太刀を持つ四乃森蒼紫と般若に囲まれ、他の御庭番衆は周囲の警戒に当たっている。
「お前は心底阿呆だな。お前に着いている護衛は逐次俺のところに情報伝達しているということを簡単に忘れた挙げ句、自分の男を簡単に死地に送りやがって」
「藤田五郎……いや、斎藤一、お前が思っているほど相楽左之助は決して弱い男ではない。ああいう大馬鹿者は容易く盤面を引っくり返すぞ」
斎藤一と般若の口論にビクビクと震える私に高荷さんは深い溜め息を吐き、「こんなものを集めて何をするつもりだったの?」と聞いてきた。
何をするつもりだったのかって言われても左之助さんの手助けを出来るアイテムを作ろうとしていただけで、ほんのちょっとだけ危ないかも知れないけど。
慎重に行えば問題なく使える物だから。
「素直に此処で吐いておけ。俺も動きやすくなる」
「糸色、この薬品で何を作るつもりだ」
じろりと私を見つめる斎藤一と四乃森蒼紫の目付きが強まり、高荷さんに助けを求めるけど。さっと視線を身体ごと逸らされ、見捨てられた事にショックを受けつつ、二人の圧力に屈して、コクリと頷いてしまった。
「……ば、爆弾を作ろうとしました」
そう言うと全員の目付きが驚愕に変わり、斎藤一は「成る程、大久保卿の日本の行く末を担うという言葉に偽りは無かったわけだな」と一人で納得している。
その話はお断りしましたってば!
「ば、爆弾をッ!?」
「ほう。火薬を使わない爆弾か」
「ならば西洋の爆薬でしょうか、蒼紫様。糸色殿、その爆弾の破壊力と範囲、使用法の危険性を我々にお聞かせ願えるだろうか?」
高荷さんの素直にビックリした反応とは違い、四乃森蒼紫と般若の会話は余りにも真剣な実用性を求めた言葉と質問に答えようとした瞬間、斎藤一に睨まれ、ビクリと身体が恐怖で跳ね上がる。
「ちょっと怖がってるじゃない!」
「黙っていろ。何処に志々雄真実の手先がいるのかも分からない状況で、新造の爆弾なんて話したら面倒事が増えるだけだ」
「……それもそうね」
「な、納得するんですか?」
「だって、糸色さんたらいつも騒動の近くにいるじゃない。下手したら私より面倒事を抱え込んでそうな雰囲気もあるし」
それはもう暴言の領域なのではないだろうかと涙目になりながら思いつつ、ここにいると神谷さんや明神君も危なくなるからと神谷道場を出ることになった。
「……阿呆が、尾行られたな」
斎藤一の言葉にまさかと思い、正門の外を見る。四人の剃り上げた同じ顔の男達が異なる武器を構えて、そこに立っているのが見えた。