岡田以蔵はコテコテの土佐弁を喋り、不破信二は聞き取って話すことは出来るものの、私達は訛った言葉を上手く聞き取る事は出来ない。
言語機能の壁もそうですけど。
私を含めて女性を見る目は、とても凄腕の暗殺者や剣客とは思えないほど破廉恥すぎて、斎藤一や永倉新八も戸惑っています。
かつて新撰組と渡り合った土佐藩の一人とは思えない醜態に侮蔑の眼差しを向ける斎藤一。人間って、あんな風に人を軽蔑出来るものなんですね。多分、あれだけは私には絶対に無理なんでしょうね。
……いえ、奈落は苦手ですね。
「左之助さん、向こうに加わらないんですか?」
「オレは斎藤か剣心に聞くさ。それに」
「?よく分かりませんが左之助さんは私としとりの傍に居てくれようとしているんですね。ありがとうございます、左之助さん」
「おう」
しかし、岡田以蔵がいるということは沖田総司や近藤勇、服部武雄も黄泉還っている可能性も格段に上がっており、下手をすれば本当に死者の黄泉還りによって、日本は地獄のように変わってしまうかも知れない。
それだけは絶対に阻止したい。
もっとも危険な人物は志々雄真実ともう一人だけ、この世界に残っているのかさえも分からないけれど。人間として彼以上の強さを持つ人はいないと思う。
刹那猛丸。
一応、改心してあの世に戻ったとはいえ彼も中々に拗らせてどうしようもなく不安定な精神の男だ。とくに叢雲牙に使い手として見初められたとき、彼は自分の行いを忘れていましたからね。
またの可能性も有り得るのです。
「あうっ」
「深く考えすぎだぜ、景。ひとりで抱え込まずにオレにも話してくれよ」
「……すみません」
ペチンとおでこを指で押された驚きながらも私の事を案じてくれた左之助さんの優しさに嬉しくなる。でも、しとりがいるので真似したら危ないです。
「で、何か分かったのか?」
「いえ、何も分かっては……ただ、黄泉還った人達は人を斬りたいと思う人だけじゃなくて、何かしら未練を持っていた人のようです」
「未練、か」
未練。
仮定として、やり残しややり遂げたいものを聞き、ある程度は譲歩してやり残しを手伝うという方針を取り、願いを少しでも叶えればあの世に還るとは思いますけど。流石に、チープな作戦になりますね。
なにより岡田以蔵の未練は不破信二の裏切り(もっとも不破さんは強い相手を探して日本諸国を巡る旅に戻っただけ)を許さない事だった。
けれど。二人はもう和解している。
───と言うことはです。
岡田以蔵の未練は新しいものに変わっている。
そう考えて再考しなければいけなくなりました。これだから快楽に流されやすい人はダメなんで……快楽、快楽かあ、あの雰囲気だとそう考えるのが一番ですね。