左之助さんによってお仕置きを受けた楓君の謝罪を受け取り、四神の「青龍」を担う彼の話を聞くことになりました。そして、必然的に黄泉還った死者の方々も一緒に聞くことになったわけですが……。
みんな、何故か私を見つめるんですよね。
「(また巻き込まれるのかな…)」
私は普通の奥さんでお母さんとして生活していたいのに、まるで私に集まるように危険な出来事ばかりが私の近くで起こっている。
「物語」の集束する地点。
その位置に偶然居合わせているだけだと思いたいですけど。やはり、この「物語を繋げる能力」を秘匿して生活して過ごすのは難しく、左之助さん、ススハムやドクトル・バタフライのおかげで間違えることはない。
それでも危険な事に変わりない。
「要するに閉じる巫女がもう居ねえのに、また新しく地獄の門が開いたって事か?」
「そうなります。姉さん……先代の封印の巫女は地獄の門を閉じる時に消えてしまって、僕も詳しい事を聞けずにいたんですが、そちらの眼鏡のお姉さんに、姉さんに似たものを感じて……」
「ちょっと待ちなさい。アンタ、まさか雪の時みたいに相楽カッケマッまで封印の礎にしようとしているわけじゃないでしょうね!?」
「テメェ、人の女房使って地獄を閉じるつもりか」
私の命と引き換えに世界の平和を保つ。
「月華の剣士」の雪は使命として受け入れていましたが、私は左之助さんとの約束もお腹の子を産んで健やかに生きるという目標があるんです。
そういうものは別の人に頼んで下さい。
「(……そう言えたら良いんですけどねえ……)」
いきなり世界を救うためにお前の命をくれと言われる現実に直面すると人間は思考停止して、いつもより考えるのが遅く感じる。
「景は渡さねえぞ。世界なんか知るかよ、オレは自分の女房と子供を守るぞ」
「うふふ、その通りだ。世界が地獄に変わったところで大して変化など起こらん。所詮、この世は元から地獄に変わらないのだからな」
鵜堂刃衛と左之助さんが通じ合った…!
「確かに、僕の傍にいる彼らも彼女で門を閉じるのは危険だと言っている。なんでも木乃伊の様な男が地獄の中で暴れまわっているとか」
「それは志々雄真実でござるな」
「ソイツは志々雄真実だろうな」
「どう考えても志々雄真実だな」
志々雄真実と対峙した事のある三人の言葉に思わず、私は苦笑してしまう。あの人はまだ私の描いた兵器や武器の図案を欲しがっているんですか。
いえ、そもそも私の何処に地獄の門を閉じる力があるのかも謎です。あるのは「物語を繋げる能力」とかですし、そういうものじゃないですからね?