「まだ続いている…!」
左之助さんを家でお出迎えして夕食を一緒に食べて、しとりをお風呂に入れて貰っている間、ドクトル・バタフライに貸して貰ったひみつ道具のひとつ無限望遠鏡を覗き込み、血みどろになりながら戦っているのが見えた。
もう手に汗握るとか死闘の結末とかではなくシンプルに怖くなってしまう。家に帰る途中に出会った岡田以蔵もひょっとしたら不破信二と同じようなことを二人でしていたのだろうか。
そう考えると恐怖と吐き気に襲われ、ぐにゃりと歪んでいた視界が望遠鏡を畳に落とした音で元に戻ったものの、やはり不安は募ってしまう。
「ん!でた!」
スパーン!と勢い良く襖を開けてやって来たしとりに驚きつつ、彼女の方を見ると少し癖のある髪の毛を乾かしている途中だったのか。
うっすらと濡れています。
「……あ、もうダメですよ!髪を乾かさないと風邪を引いて辛くなっちゃいますよ?」
「しとりつよいもん!」
「しとりは強いから髪の毛を乾かせるよね?」
私の言葉に少し嫌そうにするしとりの近くに正座し、ポンポンと自分の膝を叩く。すると、嫌がっているのにしとりは素直に来てくれる。
聞き分けも良くて良い子です。火鉢の傍で暖めていたドクトル・バタフライ私製のドライヤー、電力は私の核鉄の持つ熱量を利用しています。
エコ、リサイクルというヤツです。
「おおーっ!!ぼわぼわ!」
「フフ、温かくて気持ちいいねえ…♪︎」
「なんか楽しそうだな」
「左之助さんもしとりの後に使ってみますか?」
「なら、頼めるか?」
左之助さんの言葉にうなずき、手櫛と左之助さんに米国に居たときに貰ったブラッシング用の櫛を使い、しとりの髪の毛を真っ直ぐ綺麗に整えてあげる。
「さらさら!ドンとおやぶんもやる!」
いきなり名前を呼ばれたドンと親分は珍しくしとりの傍に駆け寄ることなく自分達の寝床である座布団と籠の中で丸まり、ハンカチーフを身体に乗せて狸寝入りしたように眠っています。
やはり知性の高さはすごいですね。
そんな二匹を起こそうとするしとりを布団に招き、不満そうな彼女の布団の足元に湯たんぽを入れて暖かくして眠るように伝える。
「左之助さん、此方にどうぞ」
「ん?おう」
ゆっくりと私の前に座ったパジャマ用の浴衣に半纏を身につけた彼の頭に触れ、ドライヤーの熱風を浴びせながら手櫛を髪に解かし入れる。
「フフ、しとりの髪質は左之助さん似ですね」
「そうなのか?お揃いだな、しとり」
「ん!おそろい!」
そう言って笑い合う二人に釣られてさっきまで不安と恐れでいっぱいだった気持ちが楽になり、髪が乾いたところで左之助さんの背中をポンポンと軽く叩いて終わったことを知らせる。
「次は景もするか?」
「えっ。じゃあ、お願いします」
さっき乾かしたばかりなんですけど。後ろ髪は誰かにやってもらったほうが綺麗になりますから、左之助さんの言葉は有り難いです。