「喧嘩は止したまえ。私は余り手荒な真似を同じ境遇の者にしたくない、況してや身重の女性を巻き込み、暴れるのであれば私は本気を出して君達を屠ろう」
その声は凍える程に重く重くのし掛かるように低く、不破信二と戦骨の二人も一瞬で警戒心をドクトル・バタフライに向けてしまっている。
「彼」は我関せずを貫いているものの、背中に骨の触手を生やし、いつでも対応できるような警戒し、四人の睨み合いに私とススハムは距離を置く。
「貴方達、いい加減にしなさいよ。お腹に子供がいる子がいるのに無駄に対抗心を燃やして馬鹿じゃないの?これだから負けず嫌いな男は嫌いなのよ」
「す、ススハムさん、それは流石に…」
「いいえ、言わせて貰うわ!!貴方達は相楽カッケマッに負担を掛けすぎ!ドクトル、特に貴方は彼女に『特典』の抑圧・制御を施しているのに力を使わせて、また再発したらどうするつもり!」
ビシッ!とドクトル・バタフライを指差すススハムの言葉に戦いを始めようとしていた不破信二と戦骨の二人は申し訳なさそうに正座し、お説教を受けるドクトル・バタフライの事を見つめる。
彼も申し訳なさそうに姿勢を正して頭を下げた。
「すまなかった。糸色君、君の記憶に関して配慮に欠けていた。許して欲しいとは言わない……だが、どうか私達に力を貸して欲しい」
「……正直に言えば怖いことも多くて、たまに突拍子もなく私を拐って事件や騒動に放り込むところは嫌いです。でもドクトルのおかげで、これからも私は生きていけるので許してあげます」
「……うむ、ありがとう」
「アタシは許さないけどね」
「ススハムさん、それはもうダメですよ」
彼女なりに私を心配してくれている事を理解し、とても嬉しい気持ちになる反面、私自身は前世の記憶を伝えるだけで、あまりみんなの役に立てていないという自覚もあります。
「とりあえず、仲直りをしましょう」
「相楽カッケマッ、時には怒ることも大事よ?」
「お、怒る事くらい出来ます!」
しとりを叱ったこともあるんです。
……こんなことを自慢しちゃいけないので言ったりしませんけど。怒るのも叱るのも苦手でも肯定するだけが母親の役目じゃないと、私はめおと先生からも沢山学んだんです。
左之助さんが私の代わりに叱ってくれることもありますが、やはり母親として子供の悪いことを叱れるようにならないといけないです。
「コホン、確かに争いは良くない。君達も喧嘩するのはやめるように、それと戦骨君は早く自分のいるべき場所に帰りなさい」
そう言ってドクトル・バタフライは綺麗に直された千年パズルを彼に差し向けた瞬間、戦骨の身体は千年パズルに吸い込まれてしまった。
「アラジン」に登場するヴィランを思い出します。