某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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三竦みの船旅 序

高荷さんは医師の助手として仕事を放棄できず、私は神谷さんと明神君、そして御庭番衆の方々と一緒に大阪行きの蒸気船に乗船し、磯の香りに包まれながら激しい船酔いに魘されている。

 

四乃森蒼紫は斎藤一と先に出立し、緋村剣心の通っていった道を追いかけるそうだ。あの長身のふたりが全速力で走る光景は、少し見てみたい気もする。

 

「…うぅ…えう…」

 

持参した船酔い止めの薬を飲み、なんとか吐かずに過ごすことは出来ているけど。いつ襲撃を受けるのかも分からない状況下にいる私達は戦いやすい甲板に陣取り、御庭番衆は人混みに紛れている。

 

「糸色さん、大丈夫?」

 

「よ、酔っただけですから」

 

元々の貧弱すぎる体力に加えて、不安定な船の上という場所、私の体調を崩すには最適であり、そして最悪の場所とも言える。

 

「本当に糸色は身体弱いよな。そんなんだと左之助も困るんじゃねえのか?ったく、ほらよ」

 

「あ、ありがとねぇ…」

 

明神君の言葉に別の意味で苦しさを感じながら口を濯ぐために竹の水筒を貰い、口には付けずに手のひらをお皿の代わりにして口の中を濯ぎ、明神君に水筒を返す。

 

例えどんなときでも、誰かに助けてもらうときでもエチケットは守らないといけない。

 

「あら、ひょっとして船酔いしてるの?こういうときは思いっきり吐いちゃう方が楽かもよ?」

 

「で、でも、それは…!?」

 

私の背中を擦りながら優しく吐瀉しろと行ってきた人の言葉に驚き、人前で、しかも友人や知り合いが近くにいるところでするのは恥ずかしいと伝えようと相手を見上げた瞬間、私の身体は強張った。

 

そこにいたのは、本条鎌足だったからだ。

 

「ん。どうかしたぁ?」

 

「糸色さん、もう医務室に行こう?」

 

「女の子一人じゃ大変だろうし、手伝うわよ?」

 

にっこりと微笑んだ本条鎌足に「見ず知らずの人なのに、ありがとうございます」と感謝の言葉を告げる神谷さんの腕を引っ張り、無理やり彼女から離れる。

 

う゛っ、気持ち悪い。

 

「い、糸色さん?」

 

「ふぅん。ずっと警戒も危機感も持たない気の抜けた子かと思ったけど、その顔付きからして私の事を知ってるみたいね」

 

そう言って彼女が一歩踏み込んだ瞬間、彼女の足元の甲板に癋見の螺旋鋲がめり込み、御庭番衆と明神君が私と神谷さんを隠すように本条鎌足と対峙する。

 

ただ、ここには普通の観光客もいるため形勢逆転とは言い難く、般若も式尉も動けず、ひたすら睨み合う光景が広がっている。

 

「テメェ等、動くんじゃねえ!」

 

……えっ、だれ?

 

いきなり雄叫びじみた声を張り上げて、私達の間に飛び込んできた右目に眼帯付けた大斧を担いだ男に思わず、そう問い掛けそうになるのを何とか堪える。

 

だれ、だっけ?

 

「お前の仲間か?」

 

「まあ、失礼ね。私の仲間はもっと立派よ?」

 

「この船は海龍が頂く!死にたいヤツは幾らでも掛かってきやがれ!」

 

般若の煽り言葉を飄々と受け流す本条鎌足。

 

そのやり取りを見ながら眼帯の男は威勢良く叫ぶ。かいりゅう?……海龍、あっ、そうだ、アニメオリジナルの話だこれ。

 

いや、でも何かズレているような?

 

 

 

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