翌朝、襖を開けると志々雄真実が泣いていた。
それはもう見事に大粒の涙を流して流していた。「うしおととら」の最終回を読み、涙腺が壊れたんじゃないかと思うぐらい涙を流していた。
あまりの異様な光景に私は襖を全力で閉めてしまったものの、部屋の中には左之助さんも緋村剣心もいる上、斎藤一達もいるのですが、斎藤一と鵜堂刃衛を除いた新撰組のみんな泣いていた。
分かりますけど。
とらと潮君の最後のシーンは悲しくも満足げに笑った名場面です。私も読み返す度に泣いて、描いているときも涙を流しながら描ききりました。
「嗚呼、満足したぜ」
キラキラと光の粒子になって消え始める志々雄真実に私は呆然と立ち尽くし、ごっそりと「うしおととら」と「からくりサーカス」の全巻を抱えて消えようとする志々雄真実を見て我に返ったんですけど。
私はどうしたら良いんでしょうか。
まだ地獄の門の出現場所も何人ほど黄泉還ったのかも聴けていない事をどうやってみんなにおもいださせるべきなのだろう。
「(そういえばまだ短編や外伝、小説は描いていませんでしたね。……まあ、左之助さん達が聴いてくれているとは思いますけど)」
このまま還しても良いかな。
そう悩んでいる間に志々雄真実は消えてしまい、完全にあの世に還ってしまった。ここで私が言葉を切り出したら責められるのかな?と思いながら、左之助さんを手招きして近付いてきて貰う。
「なにかあったのか?」
「左之助さん、志々雄真実に地獄の門に関することは聴きましたか?」
「……大丈夫だ。まだ鵜堂刃衛がいる」
そう言って後ろを指差す左之助さんの指の先には「うしおととら」を囲んで泣く三十路のおじさん達しか居らず、鵜堂刃衛はいつの間にか消えていました。
成る程、逃げましたね。
「ん!父ちゃんごはん!」
「……あっ、そうでした。みなさんの分も朝食を用意しましたから食べていって下さい。あと涙と鼻水は汚いですからちり紙か何かで拭いてもらえると」
私の言葉に頷いてくれた三十路のおじさん達はぞろぞろと台所に向かい、蛇口を捻って冷水を顔に浴びせて目を覚ますという古風なやり方をしている。
「相楽、灰皿のゴミは何処に捨てれば良い」
「それなら外のゴミ捨て場だ。景としとりには近付けるなよ、二人とも鼻が良いから直ぐに気分が悪くなっちまうからな」
「阿呆が。妊婦に煙草を押し付けるものか。その手の話題ややり取りは時尾と既に済ませている。なによりアイツに負担を掛けるわけがないだろう」
めおと先生、やっぱり夫婦の味方です……!