志々雄真実の脅威は去りましたけど。鵜堂刃衛は逃亡、紫鏡と意志疎通は不可能、振り出しに戻ってしまったようにも思える現状ですけど。
地獄の鍵。
このアイテムを使えば地獄の門を見つけることは可能になると思いますし、おそらく地獄の門は北海道の何処かに出現している。
つまり、まだ手段は残っているのです。
そこで問題になるのは私の身体とお腹の子です。遠くに行けない身体、乗り物に酔う体質、子供より弱くナメクジ以下の貧弱で脆弱すぎる自分の情けなさを嘆きつつ、どうやって地獄の門を探せというのでしょう。
「左之助さん、どうしましょうか」
「どうしましょうって言われてもな」
私の相談に腕を組み、ウ~ンと唸る彼の目の前のちゃぶ台に湯呑みを置き、豪雪の降る中庭を一緒に眺めながら火鉢の傍に二匹と一緒に丸まっているしとりの事にも視線を向け、かわいいなあと笑みをこぼす。
「お餅、焼きますか?」
「あー、なら掘炬燵の準備するか」
居間の隣室。そちらも居間ではあるものの、机は冬国の定番かつ必需品、掘炬燵になっている。しとりが火傷したら危ないので掘炬燵も少しだけ不安です。
ドンと親分は気に入りそうですけど。
そう思いながら私は分厚い半纏を身に付け、温かい緑茶を啜る左之助さんに寄り添う。やはり一番落ち着けるのはここですね。
ずっと一緒に生きていきたいです。
「ん!母ちゃんあげる!」
「フフ、なんですか?」
トタトタと駆け寄ってきたしとりの差し出すものを受け取った瞬間、手のひらに何やら不穏な気配を感じながら手を開くと金色の蝶が舞った。
よ、良かった、本物だったら卒倒していましたよ。
「オッサンの武装錬金か」
「ドクトルは過保護です」
「まあ、これだけ積もったらな」
函館でこれですから、きっと小樽や樺戸は大変な事になったいそうですが、あの人達はむしろ遊んでいたり暴れていたりしていそうですね。
「止んだら雪掻きしないといけないですね」
「そうだな。けど、その前に景は寒がりだからしとりと一緒に火鉢に当たっとけよ。それともオレの膝に乗るか?」
「ん!しとりがのる!!」
「あら、じゃあお母さんは火鉢ですねえ」
ドンと親分の近くに移動し、火鉢の中に新しい炭を投下して熱源を強める。パチパチと炭の焼ける音を聴きつつ、私はドンと親分の背中を優しく撫でる。
二匹ともしとりにべったりだけど。
こういう寒い日には火鉢の周りに集まって、なんだかどちらも猫のように思える。もっとも片方はイタチで、もう片方は妖怪なんですけれど。