豪雪も止み、数週間ほど経過したものの、志々雄真実という手懸かりになるものを失ってしまった地獄の門の調査は全国ではなく北海道に限定し、より広範囲を調べるために動ける人間を召集し、ススハムもアイヌに掛け合って調査に協力してくれるそうです。
まあ、私は調査に加わる事は無いですし。どうやって調べるのが一番なんだろう?と思いつつ、志々雄真実に差し出された地獄の鍵を手に取って眺める。
この鍵も高位の妖怪、それも地獄の力に耐えることが出来る程に隔絶した強さを持っていなくてはまともに使うことは出来ませんし。なにより人間の私に地獄の鍵を開けることは無理です。
「しとり、何処に行くんですかあ?」
ユキンコの様に笠を被って手袋を嵌めて外で走り回るしとりにそう問いかけると「あっち!!」と元気良く可愛らしく海の方を指差す。
左之助さんに会いに行くのでしょうか。
そう考えながら寒くないように研磨して平たく整えた焼き石を厚手の巾着に移し、しとりのお腹に添えるように着物の中に入れてあげる。
「個魔の方、お願いしますね」
「任せろ。母者、ついでに私の分も貰えるか?」
「フフ、もう準備していますよ」
黒衣の中に取り込まれる巾着を見て、しとりにも個魔の方とはぐれないように伝える。私は転んだり滑ったりする可能性もあって動けません。
いえ、外出して良いんですけど。
私の運動能力では九割で転ぶ。お腹の子も危険になりますし、こうして家で待っているのが最適解なのですが、しとりの事を考えて不安は募る。
しとりは控え目に言っても美少女です。
大きくなったらきっと剣路君や天兵君のようにしとりの事を好きになる子が増える。いえ、増えますね。断言してしまえるほどウチの家系は人を惹き付ける。
私は惹き付けていませんけど。
それにしとりは左之助さんのカリスマ性や身体能力を引き継いでいる。強くて可愛くて賢い女の子なんて最高のヒロインです!!
妖逆門に向かうときが不安になってしまいます。
左之助さんもそうです。私が春画や錦絵を描いているとはいえ奥様方や女学生の人気の高さはダメです。浮気をする人じゃないのは知っていますけど。
「(左之助さんを知って欲しい気持ちと独り占めして、いっぱい構って貰って愛して貰える事に幸せを感じる私が心の中で鬩ぎ合っている)」
私は表に出ないだけで、ヤンデレなのかも?と自分の事を考えながらドクトル・バタフライだけに話している私の最終手段も使わないことを祈るばかりです。