もう左之助さんの仕事場に着いている頃かなと思いながら升でお米を計りつつ、もう一つの米櫃に入っている玄米を別の升で計る。
私の目は『料理のスキル』のおかげでグラム数まで見えるし、ミリリットルという単位まで見える。まあ、普段は使わないようにしていますけど。
ニワトリやイノシシを見ると正確無比に解体する手順や順序など見えてしまう。実質、この世の全ての食材を調理し、最高の料理を作ることに特化した『直死の魔眼』と誇張して言えますね。
もっとも人間や建物はそもそも斬る場所は見えませんし、『トリコ』に登場する料理人みたいに食材の教える最適解を見ることが出来るわけです。
「(しかし、私の視力は悪いので眼鏡を無くすと視界はモヤになるので料理時以外に使い道はないです。元々料理しかしませんけど)」
そう土鍋に軽く研いで整えた玄米と白米のミックスを入れ、ガスコンロの偉大な火加減を頼りに、のんびりと主菜の準備を始めていると玄関の扉を開ける音が聴こえ、後ろに振り返ると肌寒い風が吹き抜け、身体が微かに震える。
───けれど。廊下を風より速く駆け抜け、ツルツルと廊下を滑ってきたしとり、その後からドンと親分がカーリングのように滑って現れる。
「母ちゃん、ただいまあーーーっ!!!」
「しとり、走ったら危ないですよ?」
「ん!ん!みて!みて!」
「ど、どうしたの?すごいテンションが……」
ブンブンと右手を振るしとりの目の前にしゃがみ、彼女に目線を合わせて話を聞きつつ、彼女の右手に視線を向けるとパッと握り拳が開いた。
「これは、水晶の欠片?」
「かんなちゃん、あえる!?」
そう言って私を見上げるしとりの顔は期待に溢れ、ワクワクとしているのが直ぐに分かったけれど。戦国時代にいる彼女のところには行けない。
でも、しとりはあの時の事を忘れていないんですね。
「……フフ、しとりがお婆ちゃんになるまで覚えていてあげれば神無さんに会えるわ。これはしとりが怪我をしないようにお母さんが綺麗にしてあげますから、手洗いとうがいをしましょうね?」
「ん!」
私の言葉に素直に頷いたしとりは台座を動かして、蛇口をひねって手を濡らし、石鹸を使って手を綺麗に洗い始める途中、私の隣に個魔の方が現れる。
「良いの?あんな言葉を残してさ」
「きっと大丈夫です。しとりは縁を結びました」
「大胆不敵な台詞だけど。私に手伝えることがあるなら言ってちょうだい。少しぐらい手伝ってあげる。まあ、これも縁を結んだ事になるのかな?」
「ありがとうございます、個魔の方」
しとりがまた神無と遊べる未来があると良いですね。