地獄の門のことを左之助さんに伝えて、数日ほど経つ頃には全員に話も見ていた内容も伝わる情報の伝達の速さに驚く反面、ドクトル・バタフライの神妙な顔付きに一縷の不安を抱いてしまう。
奈落の復活はまた今度話しましょう。
「空に門を用意するなど誰が考えたんだ。全くこれだから人外達の考えることは分からんのだ」
「斎藤、言い過ぎでござるよ。楓殿達も困っている、早急に対処するために、拙者達は此処に集まっているのでござろう」
「黙れ、抜刀斎。貴様は前線を退くと宣った癖に未だに俺達の近くにやって来て、飛天御剣流で酷使したその死に体で何が出来る?」
「剣一本。それさえ在れば時間稼ぎぐらい拙者でもすることは出来るでござるよ」
「先ず空に出現したという地獄の門だけど。アレは間違いなく本物だと巫女の末裔に確かめて貰った。あとは地上に堕ちてきた扉を閉める役だ」
そう言って睨み合う緋村剣心と斎藤一の二人を無視して、楓君は話を進めていく途中、静かに私の方に視線を向けてきた。
「景はダメだ。コイツを手放すなんてオレは絶対にしねえし、この世が地獄に変わろうが何だろうがコイツを手放して幸せになるつもりはねえぞ」
「阿呆が。早とちりするな、誰も糸色を犠牲にするなど言っていないだろう。それにソイツは年下好きの変態だと前回で分かっていたはずだ」
「ごめんなさい。私、夫がいるから…」
「ぐっ。普通に傷付くなあ……」
そうっと左之助さんの腕に寄り添うと彼はフンスと自慢するように笑顔になった。薫さんや恵さんは私は安全だと分かってホッとしてくれる。
しかし、「月華の剣士」の楓君が私みたいに細くて小さな人妻に興奮する変態さんだったなんて未だに信じられませんね。
なにかの間違いだったら良いんですけど。
「で、どうするつもりだ。あの門を」
「いざとなったらオレが閉じる」
その言葉に一瞬訳が分からなかった。
さっき、左之助さんは私が居なくなるのは嫌だと言ってくれたのに自分が犠牲になるのは許容すると言っているようにしか聴こえず、私は彼の事を見上げる。
「この中で彼処まで行けるのはオッサンとオレだけど。もしもオッサンが失敗したらオレが行く。その時はみんなで景と子供を守ってくれ」
「…………へぇ、私を捨てるんですね」
自分でも驚くほどに低く冷たい声が出た。
「私としとり、お腹の子を捨てて地獄の鬼達と仲良くするつもりなんでしょう。分かっていますよ、私って重い女ですもんね。疲れてるんでしょう?」
「お、落ち着け、顔が怖いぞ…!」
「自業自得だ、阿呆が」
左之助さんは顔を引き釣らせて私を見下ろす。
フフ、絶対に離してあげませんからね♪︎