地獄の門を閉じるためにドクトル・バタフライの助力を受け、広範囲に拡散して足場を形成するチャフの汎用性の高さに驚きつつ、地獄の鍵を持っている私は確定してしまい、左之助さんや不破信二も護衛としてチャフの上に乗ってくれましたけど。
重量オーバーとかありませんよね。
私の不安を理解している左之助さんに抱き締めて貰っているものの、蛮竜での飛行も浮遊も滑空も未体験ゆえに不安は募るばかりです。
「全員揃っているね。楓君、最も危険な人物が現れていないと言っていたが、おそらくソイツは地獄の門の近くに立っている筈だ」
「やはり、そうなるか」
私の知らないところで進んでいた話の概要は一応、頭の中には入っている。ただ、彼らの話す最も危険な人物というのは嘉神慎之介でしょう。
独特の美学を追求する、いわゆる拗れた人格者。
正直にいうと会いたくないタイプの人間です。
自分の理想を追求するのは良いですが、ちょっと人間の悪いところを見て、いきなり「よし、人間滅ぼそう」となる人は流石に怖い。
「何でオレもなんだよ!?」
「まあまあ、落ち着いてさ」
「そうよ?明日郎の犠牲は私達も無駄にしないわ」
「旭、オレに死ねってか!?」
そして、志々雄真実の遺刀「無限刃」を持つ長谷川君もまた今回の門を閉じる役を四神の「青龍」たる楓君が抜擢してしまった。
───抜擢したまでは良かったんだすけど。
どうにも長谷川君はまだ自分が生け贄に捧げられると勘違いしているらしく、井上君と久保田さんの二人に説得を受けています。
「もう飛びたいのだが、まだかね」
「相楽、ソイツを絞め落とせ」
「馬鹿野郎、ガキにそんなこと出来るか!?」
「明日郎、拙者もいるでござるよ」
なんだか一向に進まない出立に苦笑を浮かべつつ、剣路君と仲良くしているしとりの可愛さを書き記したい気持ちをグッと堪える。
ポラロイドカメラとか出ませんかね。
「景、寒いだろうし。終わるまで家の中行くか?」
「左之助さんが抱き締めてくれるので温かいですよ。それにお空の旅なんて初めてですから……ただ、チャフが動いたら酔うのかが不安で……」
ただの鉄片でも乗り物酔いするのか。
その事を考えるとどうしても乗るのが怖くなる。酔ったら足手まといなのが、さらに邪魔物になってしまうですごく嫌になります。
こんな大人数に吐いているところを見られるわけですから、とても気が滅入ります。左之助さんにだってそういうところは見られたくないのに。
全部、嘉神慎之介のせいです!