志々雄真実の孤軍奮闘を見つめる事を止め、地獄の中に入るギリギリまでチャフを伸ばしたドクトル・バタフライ達は壮絶な戦闘を始める最中、長谷川君の持つ刀がガタガタと震えているのが見えた。
左之助さんも蛮竜を振るって参戦し、凄まじい強さを発揮しているけれど。身体を切り裂かれた亡者は寄り添い、身体を繋ぎ合わせ、おぞましく全身に顔を付けた巨大な化け物に変貌する。
「景、もっと下がってろ!」
「は、はい!」
懐剣を掴んで結界を張っているものの、地獄の住人に効力を発揮するのか怪しく不安に思いながらも左之助さんの言葉に従い、後ろに下がっていく。
「クソ、抜けそうなのに抜けねえッ!!」
ガチンと音を出す焼けた刀の柄を握り締め、鞘打ちによる打撃で亡者を殴り飛ばす長谷川君の言うように、無限刃は抜けそうになっている。
所有者のピンチに手助けしようとしている?それとも志々雄真実が近くにいるため、その気配に反応して抜刀されようとしている。
そのどちらかなのか。それとも……。
「抜刀斎、逆刃刀はどうした!」
「弥彦に託したままでござるよ!」
「阿呆が。持ってこいと言っただろうが!」
緋村剣心と斎藤一の言い争う言葉が聴こえていたその時、斎藤一の握り締めていた竜王がカタカタと鳴動し、私の想像よりも巨大すぎる白亜の鱗を持つ竜骨精が斎藤一の刀を飛び出し、地獄の中に飛んでいく。
その先には、白い巨大な犬の影が見えた。
「────感じる、感じるぞ。犬の大将、お前はまだ其処に居るのだな…!我と貴様の宿願、最後の勝負を共に地獄の底で繰り広げようぞ!!」
竜の咆哮と犬の遠吠えが響き渡る。
「チッ。妖刀も抜け殻か」
かつて放っていた妖刀の恐ろしさは失くなったものの、五百年近く竜骨精という大妖怪を封印し、素材としていた長刀は生半可な妖怪も亡者も寄せ付けることのない彼だけの武器になった。
「左之、本物の竜は凄いでござるな」
「オレは似たのを清国で見たことある!」
「なんと!」
「オッサン共、喋ってねえで戦えや!!」
「どこかに道はあるはずだ!」
緋村剣心が倭杖で顎を殴り、左之助さんが蛮竜で亡者を薙ぎ払うときも私の近くで亡者を鞘で殴り倒していく長谷川君と楓君の二人に感謝している。
しかし、なんで亡者は私を狙うのでしょうか。
色々と考えることは出来るけど。一番分かりやすいのは弱くて女だから、憑依や乗っ取りなど簡単に行えると思っているのでしょうが、闘病後の弱りきった身体に憑依したって意味はありませんよ。