「左之、数が増えてきたでござるよ!」
「分かってらァ!!」
だんだんと亡者の数に押され始めてきた左之助さん達に不安が募る。やはりこの上空で戦いを挑んだのは間違いだったんじゃないかと叫びそうになる。
まともに戦うことも守ることも出来ない私に何も出来ることはない。今すぐ此処を離れて体勢や陣形を立て直す方が何万倍も有効である。
そう思っていたその時、片腕を捥がれたドクトル・バタフライが私の目の前に立ち止まり、ゆっくりと左手を差し出してくる。
一体、なにを?
「糸色君、君の切り札を借りたい」
「えっ」
「そんなのがあるのか?」
斎藤一の批難する様な鋭い眼差しにビクリと身体を震わせながら、私は袖の中に仕舞っていたドクトル・バタフライ謹製の道具を取り出す。
物を描く私にとっての必需品ではありますけど。まさか
「箱?」
「その質問はNOだ。正解はショドウフォンさ」
ショドウフォン。
裏正を姿お兄様が持っていた事を考えると、やはりこの世界には「侍戦隊シンケンジャー」も混ざっているという現実を理解した。
そもそもドクトル・バタフライ自身もその事を忘れてしまうほどに当たり前に把握していたため、後出しの酷さに私は泣きそうになりましたよ。
素早く描くのは「文字」ではなく「絵」です。
「お願い致します、殿様」
「火」の仮面を被った侍を空に描き切ると同時に私はへたり込み、虚脱感と吐き気に襲われ、想像以上の辛さに口許を押さえて前を見据えた、その時だった。
「……参る!」
シンケンマルを構えて亡者の中を駆け抜け、荒々しく燃え盛る火炎を纏い、圧倒的な強さと炎を駆使した剣戟に誰もが目を向けてしまう。
「へふぅ…」
「やはり糸色君は頼りになるな」
「もう二度と、使いませんからね……」
「HAHAHAHA!!!ああ、それと明日郎君に伝えておこう。その刀はもう抜けるぞ、あとは覚悟だけだ」
「ッッ、んなもんしるかあぁぁぁっ!!!」
長谷川君は怒りのままに無限刃を引き抜き、燃え盛る刀身を振り抜いて亡者を斬り伏せた。なんだか、怒涛の展開についていけませんね。
「さて、私も頑張るとしよう」
そう言うとドクトル・バタフライは金色の蝶羽を広げ、チャフを塊にして弾き出す。弾速も軌道も自由に変更できる彼の攻撃は片腕を失って尚も健在だった。
やはりホムンクルスはすごいですね。
しかし、切り札を知られてしまいました。
きっとまた知らない組織に狙われるんです。いやです、とてもいやです。こんなことになった原因の地獄の門なんて閉じてしまえば良いのです。