誰も死ぬことも地獄に引きずり込まれることもなく地獄の門を閉じることに成功し、神谷越路郎の身体を乗っ取ろうとしていた悪霊も消えた。
ただ、「彼」の身体を乗っ取って消えてしまった奈落だけは未だに消息不明のままであり、ドクトル・バタフライも心配している。
「じゃあ、東京に帰りましょうか」と祝勝会の後片付けを終えた私達にそう提案する薫さんに乗り物酔いの酷さを考え、出産を終えるまで帰れないことを伝えたときは何だか悲しそうでした。
それと長谷川君は刀を抜けるようになったものの、怒ると直ぐに炎を振り撒くため布を巻いて封印を施しています。緋村剣心に預けておけば良いのにと思う。
「で、アレは何だ?」
「ひぃんっ」
「泣いても喚いても聞き出すぞ」
そして、私は緋村剣心と薫さん達が帰って早々に「邪魔物は消えたな」と言ってやって来た斎藤一に毎日のように尋問を受けています。
ショドウフォンを手に取って私を見据える彼の眼差しは怖いけれど。私に危害を加えるつもりも怪我を負わせたりするつもりもないことは分かっています。
でも、語るに語れないのです。
「…はあ、話さないのではなく話せないのか?」
「そ、そうです。いえ、古書に載っているとは思うのですが話すと長くなってしまいますし。話すにしても斎藤さんが過労になる可能性もあるので」
「阿呆が。とっくに過労だ」
斎藤一の言葉は重かった。
「相楽、お前は聞いていないのか?」
「オレも聞いてねえよ。まあ、景が教えないのも何かしら理由や意味はある。今回の件でウチの奴らに『やはり姐さんが黒幕なのでは?』とか言われてたけどよ」
「えっ」
「やはり、糸色の身辺調査に時間を割くべきか」
「えぇ?」
二人とも私の事を全ての事件に関わっていると思っているのでしょうか。難しい話に入れず、私の目尻の涙を拭いてくれるしとりの頭を撫でてあげる。
私の「物語を繋げる能力」とショドウフォンのモヂカラを倍増して具現化する機能は最高の相性と言えますが、問題は使い続けると虚脱感や疲労感、心身疲弊も同時に起こるほどスタミナを吸われること。
それから、外道衆に見つかりやすくなります。
六人目はシンケンゴールドですし。
ショドウフォンも原型は同じですが、現物と比較するタイミングも伝も今はありません。お父様は仕事柄、一つの家系とは仲良くしていますけど。
それはお父様の臑齧りになりますから、ショドウフォンを比べるためにお会いするのは不躾ですし、なによりしとりやお腹の子に危険が及ぶのはダメです。