恙無く平和になってきた北海道。
極寒の土地とはいえ美味しいものは多く栄養分の高い食材も豊富であり、お腹の子やしとりの成長には適した場所とも言えますが、やはり友達が東京に帰って居なくなってしまったしとりは寂しそうです。
私も薫さんや恵さんに会えないのは寂しいです。
半纏と防寒着を身に付け、焼き石を巾着に入れてお腹の近くに何枚か布を挟んで着込み、しとりがドンと親分と一緒に遊ぶ姿をスケッチする。
「個魔の方、どうにか出来ませんか?」
「どうにかと言われても私は影だ。あまりお嬢さんの傍を離れることは出来ないし、お嬢さんと契約を正式に交わしていない分、多少の余裕はあるけど」
「そうですよねえ…」
「ん!母ちゃんあげる!」
トタトタと小走りで帰ってきたしとりの差し出す右手に首を傾げつつ、ゆっくりと右手を差し出すとビー玉のように綺麗な水晶玉が手渡された。
しとりは幸運のスキルか恩恵を授かっているのでしょうか?と思いつつ、特に変わった気配も霊気も感じない水晶玉を覗き込んでみる。
何も見えませんね。
「何処で拾いましたか?」
「あっち!」
「う、うぅん、どこぉ?」
「川辺だよ、母者は転ぶからダメよ」
それは、嫌ですね。
それにしても妖怪の活発化も収まり始めているとススハムに聞きましたけど。結局、この地獄の鍵は何処で使えば良いのだろう。
「左之助さんに託すのもあれですし」
「母者の心配も分かるが根を詰めるのは良くない。今はお嬢さんの可愛い笑顔と天真爛漫な姿を見て、癒されることに集中すると良い」
「(なんだかアニマルセラピーみたいですね)」
まあ、愛娘の笑顔は最高にキュートですけど。私の娘が笑顔になるだけで全人類が幸せになると言っても過言ではないと思っているのも事実です。
左之助さんもきっとそう思っています。
「ん!ん!母ちゃんあれなに?」
「あれ?あれは……なんでしょうか?」
川辺に見える人影。いえ、人ではないですね。
もっと別の妖怪かな?
そう思いながら個魔の方を上げると「アレは人だな。多分、防寒着を着込んだまま川辺を歩いていたせいで低体温症になりかけている」という言葉に驚き、ドクトル・バタフライのところに運ぶことになった。
しかし、私は彼の顔を見て戸惑った。
彼は悲しきモンスター岩息舞治────。
まだのっぺらぼうは収監されておらず、「ゴールデンカムイ」の開始まで二十年近くあります。おそらくこの岩息舞治は牛山辰馬と同じく青年期の彼なのでしょう。
出会いたくありませんでしたけど。
また、新しい変態に出会ってしまいました。