私と左之助さんの玄孫。
糸色賛は活発的に活動を進める錬金戦団に未遂とはいえ誘拐されかけたため、オシャレなのに変態さんばかりの蝶野家へと居候。そこで蝶野攻爵───つまり、あの蝶人パピヨンだけの専属メイドとして十年近く一緒に過ごしている。
しかも血筋的には直系。宗家の立場の女の子をメイドに据え置いているというシチュエーションに、ちょっとだけドキドキしてしまいますね。
「高祖母様、お洗濯物は干し終わりました」
「ありがとうございます。賛さん」
「洗濯はメイドの嗜みでございます。───そろそろ高祖母様の持つという神通力、未来視や妖怪を封じ込める秘法を教えて欲しいです」
「えと、そういうものは本当に持っていないんですけど。どうやったら賛さんは信じてくれますか?」
ずいずいっと私の傍に近寄ってきた彼女の言葉に苦笑し、どうしたら誤解を解けるだろうと考える。そもそも、私にあるのは「前世の記憶の保持」と「料理のスキル」なので未来視をすることは不可能です。
まあ、「前世の記憶の保持」による視覚情報を瞬時に整理し、予知し、予測し、推測し、観測し、観察し、視察し、あらゆる情報を導き出して擬似的に未来予測する事は出来ますけど。
多分、こういうことではないですよね。
「私は絶対に負けたくない人が居るんです。おそらく糸色賛という人間が死するその時まで、私と彼女は競って争って笑って……ずっと一緒にいます」
「フフ、津村さんでしょう?」
「……はい。既に何度も戦っていますが、お互いに決着をつけることは出来ていません。『いつか』勝つではなく『必ず』勝つが欲しいです」
そう言って真剣に私を見据える彼女の高潔な精神に微笑んでしまう。───嗚呼、本当に幸せです。どれだけ年月を重ねても左之助さんの折れず曲がらず突き進める不屈の強さは受け継がれている。
「私に出来る事なんて少ないですけど。賛さんのために出来る限りのお手伝いはしますね」
「ありがとうございます。高祖母様!」
私のお腹を傷付けないように抱きついてきた賛さんを優しく受け止め、彼女の小さな身体を抱き締める。しかし、この小さな身体であの蛮竜を振るえるなんて、世界は広いものですねえ……。
「賛、相手は妊婦だぞ」
「ひゃあっ?!」
私に抱きついていた賛さんのお尻を当たり前のように撫でるパピヨンに思わず私は目を見開き、顔を赤くして口許を隠す彼女と彼を見比べる。
えっ、そういうことなんですか?
……えぇ?まあ、カッコいいのは認めますけど。
「ん!しとりがおねえちゃん!」
「……失礼致しました。高祖母様」
「フフ、良いんですよ。嬉しいときは嬉しさを隠さず、素直に喜んでこそです。あと、パピヨン君には言っておきますけど。男の人がやってはいけない事が二つあります。女の子を泣かせる事と食べ物を粗末にする事ですよ!」
「ムッ。泣かせるつもりは……まあ」
含みを持たせましたね。
学生でなんてダメですよ!!*1