「不覚を取りました」
「だいじょーぶ?」
「ごめんなさい。ドクトルに荒療治を許可するべきではありませんでした。賛さんもあまり動かないようにして下さいね、脳に直接衝撃を受けていますから」
「……はい、お手数をお掛けします」
シュンとする賛さんの事を心配するしとりの頭を優しく撫でて上げつつ、私も彼女に謝る。
ドクトル・バタフライと不破信二の少しばかりズレた感性は知っていたのですが、それに少々ドクトル・バタフライは大好きな「武装錬金」の登場人物に出会えて荒ぶっているようです。
左之助さんとススハムの二人にお説教を受けているでしょうし、その間に賛さんには脳震盪によるダメージの有無を確認しないといけない。
「賛、怪我をしたと聞いたぞ」
「お、お坊っちゃま、申し訳ござッ、あうッ、ひぃっ…!」
私の真横を通り抜けてやって来たパピヨンはベッドに横たわっている賛さんに近付き、ゆっくりと顔を近づけてキスをするのかと思った次の瞬間、彼は賛さんの首筋に噛みつき、血を啜り始めた。
咄嗟にしとりの目と耳を個魔の方と一緒に塞ぎ、破廉恥な光景を目撃する事は阻止しましたけど。私、まだ同じ部屋に居るんですけど。
い、いいのかしら?
「やあッ…みな、ぃれ!…くらひゃ…ッ」
そう言って目じりに涙を溜めて、力無く抵抗する賛さんはパピヨンの着物を握り締め、血を啜り、首筋に出来た咬傷を舌先でなぞられ、身体を震わせる。
これ、ものすごく破廉恥なのでは!?と戸惑う私と「未来は爛れまくっているわね」と個魔の方も頬を赤く染めて、賛さんとパピヨンのやり取りを眺めています。
「……コホン、そういうのは人目を避けてしてもらえますか?しとりはまだ三歳ですし、その、こちらも反応に困って戸惑いますから」
「何を言う。主従のスキンシップだ、なあ?」
「はっ、はぃ…そう、れす…ッ……」
呆けた表情でパピヨンの言葉に頷き、朧気で虚ろな瞳は潤み、吸血鬼の行う吸血行為は多幸感を与えるとは聞いたことありますが、ホムンクルスの補食行為も似た性質があるのでしょうか。
ぼんやりとしていた賛さんも意識を取り戻し、表情の変化の薄かった顔を赤く染めて、恥ずかしそうに自分の首筋を押さえて隠している。
「…………お、お見苦しいところをお見せしました」
「い、良いのよ、本当にスキンシップ…なのよね?」
私の問いかけに二人は答えなかった。
進んでいるわね、未来は物凄く進んでいるわね。
おばあちゃんとして注意するべき?いえ、でも恋仲の二人の逢瀬に口出ししたり、文句を言うのは余り宜しい行動とは言えません。
ど、どうしましょう、この空気……。