「やはり、素敵な筋肉ですね」
キラキラとした羨望と憧憬の眼差しを上半身だけ裸の左之助さんに向けている岩息舞治に怪訝そうな目を向ける賛さん、おそらく私も警戒しています。
この人は未だに私の左之助さんに邪な感情を抱いているのだろうか。何故か筋肉は盛り上がって物凄くパンプアップしているし、上半身だけキン肉星の王子様みたいになってしまっている。
「左之助さん、手拭いをどうぞ」
「ああ、ありがとうよ」
冷気に晒された肉体は悠久山和尚の彫り作った仏様の石像を振るい、心身を鍛えるために行う日課のトレーニングによって筋肉は無駄な脂肪を削ぎ、純然たる筋肉の要塞に変わっている。
左之助さんは出会ってからずっと続けている分、この肉体の成果と弛まぬ努力は裏切らない事を知っている。私はそういう頑張り続けることの出来る左之助さんがとても大好きです。
「奥さん、是非とも再戦を許してほしい」
「ダメです!岩息さんは不破さん達と戦っていて下さい。あの人は基本的にプー太郎さんなのでドクトルの研究所に居ますから」
「私は相楽さんが良い!!相楽さんが良いんですぅ!!この想いを、ぶん殴ることで伝えたい!!!嗚呼、どうして私達は交われないのか!!!!」
「気色悪いことを言うな。誤解を生むだろうが」
そう言って怒る左之助さんに「カモォン!!」と叫び、手招きをする上半身だけ裸の岩息舞治。賛さんとパピヨンはしとりと遊んでくれていますけど。
私達の話し合いにチラチラと視線を向けている。
「そういえば筋肉フェチだったか」
「……お坊っちゃまが一番です」
「(分かります。好きな人の筋肉を育てる役目を担えるのはとても嬉しい、それも無駄な脂肪を削ぎ、赤白の筋肉を完璧に混ぜたピンク色の筋肉に作り替えるのは、とても、そう、とても楽しいです)」
「高祖母様、その『分かっていますね、貴女も』という視線は止めて頂けますか?私はお坊っちゃまの筋肉が好きなだけで、他の殿方に興味はありません」
「私だって同じです。見て下さい、この盛り上がった胸筋、余計な内臓脂肪を絞り、腹筋は頑強に、脇腹も余すところ無く鍛え上げ、陰影が生まれ、背筋は打撃を得意とする左之助さんに合わせて修行内容を定期的に変えて、この様に素晴らしいものに」
「くっ」
私の指摘する部位に視線を向け、悔しそうに自分の胸を押さえる賛さんに「オレは何をさせられてるんだ?」と左之助さんは困惑し、しとりは「むねないね!」と素直に彼女に言葉を伝える。
止めてあげなさい、それは禁句です。