多分、2ヶ月振りかな!
「此処に鬼熊と戦った男がいると聞いてきた!!是非とも会ってみたい!!!」
おにぐま?と首を傾げる私達に見向きもせず、猟銃を背負って立つ男の顔に見覚えを感じ、記憶の中を整理していくと痩けた頬を増やせば、ちょうど今みたいな風貌になるわねと一人で納得する。
でも、おにぐまなんて私は知らない。
「左之助さんは知っていますか?」
「いや、オレも知らねえな。お前ら何か仕出かしたりしてねえよな?」
そう言うと左之助さんは居間の掘炬燵で三人並んで暖まっている長谷川君達に問い掛けるも三人とも鬼にも熊にも会っていないと応えてくれた。
「じゃあ、オッサンの勘違いだな。ほっとけ」
「ん!しとりくまさんみたい!」
「ダメですよぉ?しとりみたいに可愛い女の子は熊さんに食べられちゃうかもしれません。それに、雪山にお母さんは着いていってあげられないから」
「なんだ。家に居るじゃないか」
「勝手口閉め忘れた奴、素直に言えば許す」
「「明日郎です」」
「あ?そういや閉め忘れてたな」
長谷川君の言葉に私は苦笑を浮かべつつ、縁側に腰かけたザンバラ頭の男の人に暖かいお茶を淹れた湯呑みを差し出す。来客用の湯呑みはお客さんが多いので片付けても直ぐに使うことになりますね。
「景、知ってるか?」
「初対面です」
ウソは言っていないですし、そもそも猟師と知り合えるほど私のお友達は多くない。ススハムを経由したら、ひょっとしたら出会えるかも知れないですけど。
それにお腹に赤ちゃんがいるのに雪山を登るなんていう恐ろしくて怖いことをするわけがないでしょう。私は自分もお腹の子も大事です。
「で、鬼熊を撃ったのはドイツだ?」
「まず、お前は誰なんだよ」
「俺は二瓶鉄造、熊撃ちだ。さあ、名乗ったぞ!鬼熊を殺した奴はドイツだ!せめて顔だけでも拝ませてもらわんとなあ!!」
ああ、やっぱり二瓶鉄造ですよね。
なんとなく察していましたよ。
「あの、すみません。おにぐまって?」
恐る恐る、そう訊ねると私のお腹に気付いたのか。
「すまん。身重がいたのか」と謝罪を受けつつ、八尺近い巨体の大熊だと話す二瓶鉄造の言葉に長谷川君が「ああ、それなら不破兄ちゃんだな」と呟いた。
不破信二と熊となると川沿いの時ですね。剣客兵器に背中を斬られて、死ぬんじゃないかと絶望して、左之助さんを泣かせてしまった日────。
「ふわ、どんな銃を使う!」
「いや、不破兄ちゃんは首を蹴り砕いてた」
「は?待て、そいつは人間か?」
……多分、分類的には人間ですね。