熊肉を一晩で完食して満足げに帰っていく二瓶鉄造にお礼と買い取り先として左之助さんの交易商を紹介して、もう三週間も賛さん達と過ごしている事実に、何だか嬉しく思えてしまう。
「母ちゃんみて!」
「なんで、すかぁ……」
「ちょーちょ!」
金と黒の模様を施した蝶々の羽を着物の背部に取り付けて、パタパタと可愛らしく走っているしとりの姿は、まるで純白の景色に舞い降りた妖精さんの様に美しく可憐すぎました。
キュート、とてもキュートです。
「しとりお婆様、キュートです」
「ん!ほまれちゃんもかわいい!」
「フフ、二人ともかわいいですよ」
賛さんはしとりに目線を合わせて話している傍に寄り、二人の頭を優しく撫でていると「糸色景も着けるか?」とパピヨンに聴かれ、少しだけ悩む。
「いえ、お腹の子に負担を掛けてしまいますから止めておきます。それと、しとりに素敵なプレゼントをしてくれてありがとうございます」
「フッ、この俺の蝶・ハイセンスなコスチュームに見惚れてしまうのは仕方ないことだが、まさか幼児にまで気に入られるのは予想外だ」
私の血筋はセンスに偏りもありますからね。
お父様もお母様もお兄様も気に入った事には一直線に進んでいきます。私みたいに雑食的に色々なものに手を出している方が、糸色としては珍しい。
「しかし、賛の修行はいつ終わるんだ?」
「何を言っているのですか、お坊っちゃま。もう私の修行は終了していますよ?」
「ムッ。そうだったのか」
「私も初耳です。いつの間に?」
「高祖父様と戦ったときです」
ずいぶんと、かなり前ですね。
まあ、賛さんがもう少しだけ居たいのなら居て良いです。ここは未来に比べると不便かも知れませんが、私も左之助さんもいますからね。
「では、帰りましょうか」
「そうだな。帰るか」
「そ、即決ですね。二人とも」
「私達は未来の人間ですので、ここに留まり続けるのは歴史に多大な迷惑と危険を与えてしまいます。なにより私は奈落を倒さなければいけないのです」
「俺は武藤と決着をつけたいからな」
「ん!ばいばい!」
そう言うと賛さんとパピヨンのふたりは何事もなかったかのように未来の世界に帰ってしまった。武藤君と津村さんもそうですが、直ぐに答えを決めることが出来るのは凄いことだ。
私は答えを出すことも苦手で、いつも左之助さんに頼っている。……また、一人暮らしをしていたときのように周囲を警戒できるように、少しずつ警戒心を持てるようにからないとです。