斎藤一の話していた熊のホムンクルスの箝口令を敷いて尚も噂は瞬く間に拡がり、その熊を狩ろうと猟銃を構えて山狩りを始める猟師達の姿を見ることが増えた。
函館や小樽、樺戸など転々と場所を移動しているものの。目撃数の多さはアイヌ民族のコタン近く、雪山に登るにしても夜間に動くことは出来ず、猟師達の行動を知っている様にホムンクルスは逃げている。
いや、逃げて狩りをしている。
かなり慎重なホムンクルスなのかも知れないけど。ドクトル・バタフライというホムンクルスの存在を知っている分、此方にアドバンテージも多い。
北海道の警官隊に加えて、陸軍の方も熊のホムンクルス討伐に乗り出す話をドクトル・バタフライに聞き、一抹の不安を抱いてしまう。
如何に強力な兵器を用いようと核鉄と武装錬金を使えなければホムンクルスを破壊することは不可能に近い。もっとも例外として蛮竜を使える左之助さん、光速のスピードと多彩な足技を使えるススハムは違うけれど。
「左之助さん、今日も見回りですか?」
「嗚呼、ススハムんとこにも出てきたらしいからな。斎藤も出没する場所を絞って捜査するとは言っていたが、他の奴らがビビってやがる」
「…仕方ありませんよ。私も町中に出てきていなくても怖くて身体が震えていますから……やっぱり、大人になってもお母さんになっても怖がりは治りませんね……」
「まあ、怖いものがあるほうがオレは安心できるけどな。お前に怖いものが無かったら、きっとどこかオレの知らないところに行っちまう」
「んッ、別に逃げませんよ?」
くしゃりと頭を強く撫でられながら彼の言葉に不満げに言い返すと「むかし、どこかの物書きは何も言わずに金持ちの屋敷に行ったり、どこぞの御庭番に連れていかれたりしてたんだがなあ?」と笑ってきた。
それ、どちらも般若の犯行ですよね。
私は無関係です、むしろ誘拐された方です。
「しかし、熊とやるのは初めてだな。熊にも弱点とかあるのか?」
「基本的に分厚い毛皮と脂肪に包まれていますけど、眉間の部分は弱いと聞いたことはあります。まあ、何気に殴り狩っている人も居ますから」
そう、殴り狩っている人もいる。
未来の世界チャンピオンも描いたら人気になるでしょうか?なんて思いつつ、不破信二の喜びそうな事なので止めておこうと決める。
「じゃあ、行ってくる」
「左之助さん、お気をつけて」
「嗚呼、景もしとりと寝るなら熊には気を付けろよ?ホムンクルスならお前を狙う可能性もある」
それはそうですけど。
まだ、私は見つかっていないはずです。