「そういえば町中で騒ぐ声は余り聴きませんね」
「オッサンの仕業だろうな。目を凝らすと小さい粉みたいなのが視界に映る、武装錬金で記憶を弄くっているのか。ホムンクルスの存在だけ隠しているのか」
ドクトル・バタフライの研究所での診察を終えた帰り道、私の呟きにしとりを抱っこしている左之助さんが応えてくれた。
成る程、それなら可能ですね。私の『特典』も制御下に置ける武装錬金なら記憶を操作する事も容易く、広範囲に及ぶ効果の持続するでしょう。
ですが、ホムンクルスの無尽蔵のスタミナを有していても連日連夜の記憶操作の負担は大きい……はずなんですが、彼は全く疲弊している様子を見せなかった。
紳士然として尚も冷静さを保つ姿はダンディズム溢れる姿ですけど。
やはり心配になる。あの人が強いから大丈夫ではないんです。ドクトル・バタフライは強くても弱くても関係なく、お友達だから心配なんです。
「まあ、オッサンの遣り方を咎める事は出来ねえだろうな。オレ達に火の粉が飛ばねえように、オッサンなりにやっていることだ」
「……そう、ですね」
確かに、そうだ。
ホムンクルスの存在を広める事になってしまった原因は私を狙っているホムンクルス達の仕業であり、間接的ではなく大本に私が位置している。
私に何か出来れば良いのですが、むしろ被害拡大の要因になる可能性も否めないですし、やはり私達は下手に動くのではなくドクトル・バタフライの行動を見守るべきでしょうね。
「左之助さん、一つ聴きたいんですけど。さっきから私の事を見つめている、あの人は誰ですか?」
「景の知り合いじゃねえのか」
「
私がそう言うとしとりを降ろす左之助さん。不満そうなしとりの頭を優しく撫でて上げ、手を繋ぐ。私の記憶に存在していないということは「別の物語」に転生していた転生者ということになります。
ただ、私を見つめる理由が分からない。
「わ、わあっ!!無理!顔が良い!」
「……私の夫です、あげませんよ?」
「はわわ!」とかリアルで聴くとは思いもしない言葉を口にする少女にムッとしながら、左之助さんの腕に抱き付き、彼女の事を見つめる。
「わ、分かってますよ。私は出来る女、目指すはNTR撲滅!私は色白美形のお師匠が好き!ビバ!今世ライフ!全力で謳歌するぞ!」
「(……この子、わりとおバカさんなのでは?)」
「景、しとりと一緒に危ないから下がってろ。どう見てもヤバいヤツだ。それに、コイツからキナ臭い気配を感じる」
ホムンクルスの次はドクトル・バタフライに教えてもらっていない転生者ですか。なんだか頭が痛くなってくる状況ですね。