左之助さんにしとりをお願いし、あまり使いたくないショドウフォンでドクトル・バタフライに連絡を取った瞬間、電話越しに何かが崩れる音が聴こえてきた。
───つまり、私の目の前にいる彼女は本当に私もドクトル・バタフライも
「遅くなったかね?」
「いえ、予想より早い到着です」
そう言って縁側で靴を脱ぎ、部屋の中に入ってきたドクトル・バタフライに驚く彼女の視線は自分の知っている人を見る目ではなく、珍しいものを見る目だった。
チラリと私に目配せをしたドクトル・バタフライは小さく頷いた。───と言うことは、だ。彼女は私や彼と同じく転生者である。
おそらく私に出会ったことも予想外の出来事、もしくは想定外のアクシデントに巻き込まれて、ここにやって来ているということになります。
「さて、自己紹介と行こう。私はドクトル・バタフライ、しがない錬金術師だ。君と目の前に座っている女性は相楽景と言う名前だよ」
「ご丁寧にどうもです!私は富山の薬師、名を桐と言います。木篇に同じと書いて、桐。どうぞ良しなにお願いいたします!」
富山の薬師。
確か室町時代を始まりとした諸国を巡って薬を販売する人の総称の筈ですけど。桐という名前にも心当たりはありませんし、判断し難い。
「ふむ、その桐君が何故彼女達に接触を?」
「いやー、お恥ずかしながら彼女の隣を歩く旦那様の背広越しに盛り上がった筋肉に興奮してしまいまして、こう堪らなくなってしまい」
「成る程、仕方ないですね」
「糸色君?」
だって、左之助さんの筋肉ですよ?世の中の女の子はカッコいい男の人が、見て分かるほど筋肉質だったらトキメキを感じてしまうんです。
「……コホン、理由は分かりました。ですが、どうして転生者である貴女の情報がドクトルに届いていないのかを教えて頂けますか?」
「ん?え、転生者?」
「な、なんですか?」
ずいずいっと机に手をつき、身を乗り出して私に近づいてきた桐と名乗った女性の視線に不安が募り、お腹を守るように後ろに少しずつ下がっていく。
刹那、彼女の頭が何かに叩き落とされた。
「ヴァカめ!だから貴様はアホウなのだ!」
「……すみません。ドクトル、転生者は此方です」
「なに?」
眼鏡を外して眉間を揉み解す。
普通、そういうものになりたいとは望んだりしない筈ですが、あの戦骨の規格外な強さや性格を考えるとあり得るんですよね。
「お師匠ぉ!頭がぁー!!」
「そこで反省していろ。改めてすまないな、私はしがない聖剣に生まれ変わったオジサンだ。ちなみに剣に転生した理由は剣になりたかったからだ」
「……ドクトル、頭が痛いです……」
「私も頭痛がしてきた」
───そこにいるのは剣の柄だった。
ああ、もう本当に何なんですか?