個魔の方は影の妖怪という存在ですが、人間に似ているので人外という感じは余り有りませんが、この人は見た目も性格も完全に人外です。
だって、剣の柄ですもん。
「えーっと、話を纏めると桐さんは現地人ということで良いんですよね?」
「はい!私はお師匠に拾われました!お師匠以外の転生者を見るのは初めての事ですが、こんなことを口外するつもりはありません!」
元気の良い子なのは分かります。
いえ、たぶん、本当に桐さんはおバカさんなんでしょうね。転生者は原則として『人間、もしくは人間に酷似した存在』に生まれ変わる事は決定事項と神様も言っていたのに、まさか彼は特例扱いですか。
そう思っていた次の瞬間、彼女の耳の中にチャフが侵入していき、即座に安眠の彼方へと引きずり込まれ、スヤスヤと寝息を立て始めた。
少し、強引すぎるんじゃ?と思いながら彼女に此方の情報を与えすぎることを危惧しての行為だ。錬金戦団と接触したら多分彼女は普通に話しそうですし。
「ドクトル、どうしましょう?」
「どうするも何も彼は『剣に成る』という『特典』を選んだだけであり、人間であることは変わりはない。そうだろう?」
「ヴァカめ!……と言いたいところだが正解だ。この姿は仮の姿、本来の姿は人間だ」
その言葉に私も納得する。
確かに『剣に変身する』という能力であれば『特典』として与えて貰えるでしょう。でも、そこまで剣に成ろうとする理由が分からない。
「ちなみに特典の名前は『剣に変身し、剣に成る能力』だ。カッコいい横文字とか付けたいが、俺のボキャブラリーとネーミングセンスはハッキリと言ってカスだ」
「あの、そこまで卑下するのはダメですよ?」
「ふむ、ネーミングセンスとなれば物書きたる糸色君の得意分野と言えるが、何か案はあるかね?」
「え、えぇ?」
私、お腹の子の名前も糸色家と相楽家に繋がるじっくりと考え中なのに見ず知らずの何だか剣に固執している変態さんの名前も考えないといけないんですか?
「……もう、幻想虎徹で良くないですか?」
「
「……どこかで聴いたことがあるな」
まあ、描いていないので「物語」が繋がることはないですけど。それと幻想虎徹と書いて、
「しかし、どうして剣に?」
「生前は漫画のキャラに憧れて刀鍛冶を目指していたんだが、だんだんと刀を打っているときに『なんかすげえ刀になりてえや』と思ったのがキッカケだ」
「ドクトル、この人の事は引き取って下さいね」
「断る。野に返したまえ」
私の言葉を遮ったドクトル・バタフライに深い溜め息を吐きつつ、問題は彼の性格ではなく彼の転生した「物語」のほうです。
絶対、面倒臭いヤツです。
「本題に入ろう。虎徹君、君は自分の生まれ変わった世界を知っているかね?」
「知っているぞ。『シンケンジャー』だ」
どうして、そんなことするの?と泣きそうになりながらも遂に不老不死や不死身に関する物事がやって来たと知り、つわり以上に気持ち悪い事実に、どうしようもなく頭まで痛くなって来ました。
【概要用語解説】
本作の単語や転生者に関する事を解説します。
【幻想虎徹】
本名「幻想虎徹」。
鍛造年数は凡そ二百年程。35cm(剣の柄)。
「侍戦隊シンケンジャー」に登場する予定の聖剣(自称)。生前は刀鍛冶を目指していた普通の青年だったが、ふと「なんかすげえ刀になりてえや」と思うようになり、転生する際に「剣に成りたい」と懇願した。
ハッキリと言えば変人。趣味嗜好は「剣に成る」という事一色であり、本来は人間の姿でいることが当たり前なのだが、本当に剣の柄になることしかしない。
転生する際に選んだ「特典」は「剣に成る、変身できる能力」と「転生してから決めたい」。
一つ目の特典「剣に成る、変身できる能力」は文字通り。自分の身体を刀剣類に変身する能力。生前の経験も加わっているため並大抵の刀剣類より強靭な武具だが、精神の昂り次第によって、その姿は光剣に変形する。
二つ目の特典「転生してから決めたい」は転生後に神々に願うことで「特典を付与する」という物であり、その気になれば世界征服も出来る「特典」である。
だが、その特典さ二百年前に出会った孤児に使った。
【桐】
本名「桐」。
年齢は不明。身長157cm。
二百年前、江戸時代に生まれた孤児。死ぬことを恐れて行き倒れていたところを「お師匠(幻想虎徹)」に救われ、彼の使い手としての生を受け取ることになった。人間状態のお師匠は好き。剣の柄状態のお師匠も好き。
彼女の「特典」は「健やかに生きること」。
与えられた特典は「健やかに生きること」であるが、それは「幻想虎徹」が朽ち果てるまで共に生きることを意味する。故に、彼女は手入れを怠ることはない。いつまでも愛するお師匠と生きるために歩んでいる。