ほんの少しだけ大変な面倒事に遭遇して二日後のお昼過ぎ。左之助さんはしとりに背中を踏んで貰い、かわいい按摩を受けている傍らで私は電報を読んでいます。
差出人は四乃森操さんです。
どうやら祝言に出席できなかった私達にお手紙を出して幸せのお裾分けをしようとしてくれているようですが、本来は贈り物を贈るべき立場の私達に京都の醤油や調味料、酢の物を送ってくれた。
「ニワトリの足の干物?」
出汁取りには使えそうですけど。
何故、足?と首を傾げながら箱の中に戻す。他にも色々と届いているものの、あからさまに在庫処分としか思えないものも混じっている。
「硯は助かりますね」
最近は万年筆か木炭を削って作った鉛筆を利用していますけど。やはり墨を使って描けば迫力も出るのですごく助かります。
ただ、流石にサイン用の紙束は怖い。
この御時世に転売はあり得ないけれど。模倣して模造する絵草紙はよく目撃します。「うしおととら」は、やはり少年少女の心を掴んでいますね。
「ん!しとりおもい?」
「いや、軽すぎる。もっと肉だな」
「おにくすき!」
左之助さんの言葉に嬉しそうにしとりは笑い、左之助さんの背中を、主に腰の辺りを踏み、按摩を行っている。確かにしとりはいっぱい食べているのに、あまり重くなったりしない。
成長するために栄養を根こそぎ吸収しているのかしら?と思いながらも京都のお土産の沢庵を彼女の口許に近付けると「ん!おしいー!」と笑ってくれる。
やっぱりしとりはかわいいです。
お腹の子が産まれたら優しいお姉ちゃんになってくれて、きっとしとりは幸せになってくれたら、お母さんは本当に嬉しいです。
「……ところで、左之助さんはいつまで私のお膝に頭を乗せているんですか?流石に、このままだと首が折れちゃいますよ?」
「膝枕は旦那の特権だ」
「前にも聞きましたね、それ。今はもうしとりの特等席ですけど、しとりを怒っちゃダメですよ?」
「まあ、取られたのは悔しいが母親に懐く娘の邪魔をするわけにはいかないだろう?」
「フフ、偉いですね」
よしよしとうつ伏せのまま私のお膝に頭を乗せている左之助さんの頭を優しく撫でながらしとりを見ると踏み疲れたのか。左之助さんの背中を降りて、湯呑みに入れていたお茶を彼女は飲み始める。
「しとり、お口も拭きましょうね」
「ん!」
ハンカチーフを使って彼女の口許を拭いているとパカッと口が開き、顎を持ち上げて閉じるもパカッとしとりの口が開いてしまう。
これは、無自覚ですね。