すくすくと大きく育ってきたお腹を優しく撫でているとしとりも私のお腹を優しく撫で始め、その可愛らしい行動にクスクスと笑いながら、今度は彼女の頭を優しく撫でてあげる。
「……しとり、今度は何を拾ってきたんですか?」
「しとり、なにもひろってないよ?」
「母者、ありゃ妖怪じゃなくて変態だ」
しとりも惹き付ける体質を目覚めですか。
お母様も自意識過剰なナルシストの能を仕事とするお父様と夫婦になる際、それはもう熱烈なアプローチを受けていたそうです。私も言い方を悪くすればヤンデレ化する寸前の左之助さんを無自覚に育ててしまったため、こうして幸せになっているわけですけど。
まだ、四歳にもなっていないしとりに近付こうとする変態さんは追い返して大丈夫です。いえ、むしろ私の娘には幼馴染みとは言い難いものの、それなりに親しくしているお友達がいる。
「個魔の方、知っている顔ですか?」
「いや、私は初見だ。そもそも私は母者みたいに全てを記憶している訳じゃないから、そういう事を聴かれても困るんだが……」
「でも近付くのは怖いですから…」
「ん!しとりがついてる!」
「フフ、ありがとうございます」
よしよしとしとりの頭を優しく撫でていると窓に張り付いて、私達の声を頼りに部屋の中を見回す変態さんに頬が引き釣り、どうしましょうか?と個魔の方を見上げると「まあ、見えない私が相手する」と呟いた。
そこから何かに引きずられる恐怖に悲鳴を上げ、がむしゃらに走って逃げていく男の背中をこっそりと見送りつつ、よく見ると左之助さんの商会で働き始めた男の人だと気付く。
先日のホムンクルスの件もありますし、おそらく錬金術関連の人なのでしょう。偶然、しとりと歩く私を見付け、尾行して核鉄を奪取しようと目論んでいた。
概ね、こういうことでしょうね。
「悪い。遅くなったか?」
「あ、お帰りなさい。左之助さん」
「ん!おかえり!」
「ああ、ただいま」
いつものようにお帰りの言葉を伝えて、今日も三人で遊び歩いている長谷川君達の事を考える。あの日、なにやら久保田さんがトキメキを感じる出来事があったそうですが、それも関わっているのかしら?
「父者に伝えてないのか?」
「……少し悩んでます。彼も真っ当に働いているようですし、今回の出来事を報告して錬金戦団が襲ってきたら考えることにしましょう」
「私は母者の意見に従うさ」
「助かります。個魔の方」
そう言って個魔の方の頭も撫でてあげると「……私の方が年上だって分かってる?」と言われ、思わずクスクスと笑ってしまう。ゆっくりと個魔の方に「母と呼んでくれる間は、貴女も私の大切な娘です」と伝えると気恥ずかしそうに彼女は頬を赤らめた。