昨晩の出来事と私のお腹の事を踏まえて、またドクトル・バタフライの研究所に入院という形で残ることになりました。もっとも今回はしとりも一緒です。
左之助さんは三人と一緒に我が家に戻り、錬金戦団の襲撃を想定して残るつもりのようですが、少しだけ不安を募らせる。搦め手を得意とする武装錬金を使われたら、蛮竜でも危うい筈です。
まあ、左之助さんなら力でねじ伏せそうですけど。
直ぐにその光景を思い浮かべて苦笑をこぼす。左之助さんに会えないのは辛いですが、お腹に負担を掛けてしまうのは良くないですからね。
「しとり、それはなんですか?」
「ん!どくとうくれた!」
そう言って手に持っていた人形を見せてくれるしとり。着せ替え人形、いわゆるビスクドールを差し出す彼女は嬉しそうに笑う。
市松人形もそうですが妖怪の存在する世界で、ここまで精巧な人形を見ていると不安になりますね。別に人形が嫌いではなく、少しだけ人形の登場する洋画にトラウマがあるだけです。
「ん!母ちゃんもなでて!」
「えと、失礼します」
恐る恐る、ビスクドールの頭を撫でた瞬間、ガッシリと私の右手を人形は押さえつけるように掴み、コアラのように両足を絡めて、私の右手に張り付いた。
これは、怖い云々ではなく仕事の邪魔では?
私の考えに気付いていないしとりは「ん!なかよし!」と笑顔のまま部屋を出ていき、ガラガラと更に大量の人形を乗せた子供用の荷車を引いて歩く。
怖い以前に、どこでこんなに?
「……とりあえず、離して貰えますか?」
一応、そうお願いしてみると素直にビスクドールは私の右手を離してくれたので「ありがとうございます」と伝えて、仕事の邪魔にならないように、ゆっくりと机の脇に置き、絵草紙の続きを描く。
いよいよ「からくりサーカス」も終盤です。
みんなと過ごしたりするのは楽しいですが、長屋に居たときよりもほんの少しだけ描く時間は取れていない。でも、みんな私の大切なお友達です。
たまに原稿を覗こうとする不届き者はいますが、それだけ私の憧れ続ける大先生の描いてきた物語は素敵なものだと分かります。
「おや、その人形は糸色君のかね?」
「え、ドクトルがこれをしとりにプレゼントしてくれたんじゃないんですか?」
「私に人形をプレゼントする趣味は無いが……ふむ、どうやら武装錬金のようだね。しとり君を取り囲む人形は私が制圧しておこう」
「すみません。お願いします」
まさか、しとりまで狙うなんて酷いです。
許しませんからね、錬金戦団…!