翌日のお昼頃。
私は左之助さんにも黒幕のように思われているのかと不安に思いながらドクトル・バタフライの研究所の台所を借りて、しとりと自分の分の食事を用意し、ドンと親分の分のご飯を準備する。
「母ちゃん、またひろった!」
「ジッパ!」
「………お昼ご飯、食べますか?」
大きな風呂敷を背負ってやって来たヒトカラゲに、そう訊ねると嬉しそうに「ゾーヒョ!」と頷き、しとりに手を引かれて手洗いと嗽を始める。
私の愛娘は惹き付ける体質を受け継いでいるのでしょうかと少しだけ悩みつつ、子供の大切なお友達を無理やり追い返すのは可哀想ですし、事情も聞かずに警戒するのは酷いことなので止める。
しかし、しとりが妖怪を怖がる事も怯える事もしないのは誇らしいです。お母さんは怖いものがものすごく苦手ですけど、しとりを大切に思ってくれるお友達なら、怖くはありませんから。
「ん!おててあらえてえらい!」
「じ、じぱぁ?」
「……年の差がありすぎです」
四百歳差は流石に看過できません。
ヒトカラゲも褒められて嬉しかったんですね。
そう思いながらお昼ご飯を病室の端に用意された簡易的な畳を敷いて作った和室の卓袱台にお皿とお椀を並べていく途中、ふとヒトカラゲは喋っていた筈では?
『前世の記憶の保持』を使って思い返してみると、しっかりと話している光景と言葉も思い出す事は出来るけれど。しとりと一緒にご飯を食べているヒトカラゲは人語を喋ろうとしていない。
いえ、喋ることが出来ないのかも?
「ジッパ!」
「え?私に、ですか?」
ご飯を食べている途中、思い出したように大きな風呂敷を差し出してきたヒトカラゲに戸惑い、恐る恐る彼の持っていた風呂敷を受けとり、その重さに落としそうになりながらも傍に寄せて風呂敷を
そして、直ぐに風呂敷を締めてお返しする。
「ジッパ!?ジッパ!」
「い、いえ、イヤです。どう見ても厄ネタ…悪巧みに巻き込まれるものじゃないですか。そもそも妖怪の扱う道具を人間の私が使えるわけが…」
「じ、ジッパ!」
「で、ですから妖怪に生まれ変わるつもりもありません。第一、身重の女に何をさせる気ですか?いくらしとりのお友達でも悪いことはダメです!」
「かげちゃん、わるいことするの?」
「じ、じぱぁ……」
私としとりの言葉にしょんぼりとして頭を下げるヒトカラゲの素直な態度に「はい。謝っているので許します。でも、ちゃんと持って帰るんですよ?」と言いつつ、私は妖シュリケンや小槌について悩む。
伊賀崎の道具ですよね、その小槌。