某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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斗えとは言えず 序

ヒトカラゲは大きな風呂敷を担いで帰っていったものの、またやって来る可能性もあります。もうすぐ四歳になるしとりも危ないことには近付かないように教えて、色々と学ぶ時間も必要ですよね。

 

「ん!母ちゃん、こっちきて!」

 

「はいはい。なんですかあ?」

 

研究所の外で遊んでいるしとりの呼び声に答えて、窓を横にずらして彼女の事を探す。しかし、何処にもしとりの姿は見えない。

 

おそらく個魔の方の仕業でしょうね。

 

「しとり、おやつ抜きにしますよ」

 

「やだっ!」

 

「嬢ちゃん、自分で隠れ鬼をしたいって言ったのに直ぐに出ちゃダメよ?まあ、母者の方が上手(うわて)だっただけなのかもだけど」

 

「フフ、上手も下手も無いですよ。しとりはおやつが大好きですけど、みんなで食べられないのが悲しいだけですもんね?」

 

「……ん、ごめんね?」

 

「怒ってないですよぉ。お母さんも隠れ鬼をしたかったのにズルいことをしてごめんなさいね。ほら、個魔の方も一緒に手を洗っておやつを食べましょう」

 

しとりと個魔の方に研究所の中に入ってきて、一緒におやつを食べるように話しかければ、二人とも笑って玄関の方へと向かっていき、個魔の方はいつものようにしとりの影に潜り込んだ。

 

「糸色君、その様な薄着では母体に障るだろう」

 

「ドクト……だれですか?」

 

「私はドクトル・バタフライだが?」

 

いつの間にか私の真横に立っていたドクトル・バタフライの姿と声を真似た存在に困惑し、ゆっくりと後ろに後退りながら妖怪の存在をはね除ける懐剣を握り締め、お腹の子を守るように少しずつ玄関に向かって下がる。

 

「刀々斎の守り刀か」

 

「……貴方、まさか奈落なの?」

 

「やはりお主は儂が分かるか。四百年ほど時間は労したが、コイツの身体の主導権の七割は儂のものに成り始めているぞ」

 

ぐにゃりと顔の形を作り替えて、私の知っている奈落の顔に変わった瞬間、彼の手が結界に触れる。でも、彼の身体が結界をすり抜けることはない。

 

「チッ。随分と重複した結界を仕掛けッ!?」

 

触手で私の身体を結界諸とも包み込もうとした奈落の身体が横一文字に切り裂かれ、ドシャッ…!と廊下に彼の身体は崩れ落ちる。

 

しかし、奈落は崩れた身体で身を捻った。

 

「くっ、くくくっ。流石、糸色景の娘だな」

 

「嬢ちゃん、戦えるのはお前だけだ。しっかりと教えてあげるから間違うなよ?」

 

「ん!がんばる!!」

 

そう宣言するしとりの手には撃盤と二枚の撃符が握り締められている。でも、一枚は色褪せてもう使えない状態になっている。

 

でも、奈落と戦うなんて危ないこと。

 

不安に思いながらしとりを見ると、にっこりと太陽のように綺麗な笑顔で笑ってくれた。

 

「母ちゃん、まっててね」

 

「……はい。待って居ますよ、しとり」

 

その笑顔に自然と安心できる力を感じた。

 

 

 

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