ドクトル・バタフライ謹製の「ひみつ道具」はとても便利ですけど。基本的に彼は医療器具や医学関連のひみつ道具を最優先に製作し、自分の身体を使って効果を確かめ、人間版のモルモット代わりとして、よく彼は不破信二を頼っている。
正直に言うと不破信二の強靭な肉体はホムンクルスや妖怪でも打ち砕くことは難しい。衰えれば可能性はあるものの、そこまで待つことの出来る人はいない。
「ドクトル、私は要りませんよ?」
もう守りの刀の懐剣、地獄の鍵らしき首飾り等の身を守る術はあります。まあ、後者は使えば一瞬で燃え糟になるでしょうけど。
「Lady。私はまだ二十歳も越えていない君に護身用の道具は必要だと思うのは仕方の無い事だ。ほら、このひみつ道具を指に嵌めたまえ」
「イヤっ、私は左之助さんの妻です!」
私の左手を掴んで「空気ピストル」を指に嵌めようとするドクトル・バタフライに抵抗する。私の十指に嵌めるのは左之助さんにプレゼントして貰った大切なエンゲージリングだけなんです。
いくらドクトル・バタフライでもイヤです!
「オッサン、何してやがる」
「……左之助君、決して疚しい気持ちはない。この指輪は糸色君の身を守るために必要な護身用のアイテムだ。だから拳を鳴らすのはやめたまえよ」
「蝶野、俺は独身だから知らねえけど。無理やり指輪を嵌めようとするのは悪いんじゃねえのか?」
「信二君、君は誰の味方だ?!」
「強いて言えば糸色だな。メシが美味い」
身重の私がいる病室で喧嘩を起こそうとしている左之助さんの名前を呼び、かなり……いえ、ものすごく怒っている顔付きの彼を手招きする。
「怒ってくれてありがとうございます。でも、私のお腹にはやや子がいるので危ないことは止めて下さいね。あと、ドクトルも指輪以外なら受け取りますから、そのひみつ道具は変えて下さい」
「……すまなかった」
「いや、此方もMrs.に不躾な事をしてしまった」
「フフ、二人とも謝れて偉いですね」
いつもの癖で頭を撫でるつもりだったけれど。
150cm(六年経つも伸びていない)の私と違って、真っ直ぐ立っている状態の182cmの左之助さんと185cmのドクトル・バタフライでは絶対に手は届かない。
不破信二も背丈は高いからズルいです。
そう思っていると左之助さんはベッドの縁に腰掛け、ずいずいっと自分の頭を私に差し出してきた。フフ、左之助さんはいつも私のお願いやしたいことを後押ししてくれますよね。
「ありがとう、左之助さん」
「おう。オレもありがとうな」
「……私も妻と息子に会いたくなってきたな」