私と左之助さんは神谷さん達が住み込みで働く妙さんの実家であり、彼女のお姉さんが経営する食事処「白べこ」にやって来ていた。
緋村剣心と無事に再会できた事を記念し、柏崎念至の奢りで食事する事になったけれど。私の周りに護衛役の御庭番衆が集まりすぎて、かなり息苦しく感じる。
「左之助さん、どうぞ」
「ああ、ありがとな」
「フフフ、良いんですよ」
グツグツと「白べこ」秘伝のタレの中で煮える野菜や豆腐、程好くタレと絡まった牛肉をお椀に寄って左之助さんに手渡し、白米と一緒に頬張る彼の事を見つめる。
久しぶりに左之助さんとご飯を一緒に食べているという事を密かに喜びつつ、御庭番衆の方々にも牛鍋を寄って手渡し、その間に私も少しずつ牛鍋を食べる。
ただ、貸し切り状態の「白べこ」の一角は重苦しい雰囲気を醸し出している。緋村剣心と神谷さん、明神君、斎藤一、四乃森蒼紫の五人で一つの鉄鍋を囲んでいる場所は、黙々と食事を続けている。
巻町さんは羨ましそうに見ているけど。
あの空間に入り込めると思う、その一途な情熱は凄いと思うわ。でも、彼処に割り込めるとは到底思えないのもまた事実である。
そう静かに思っていた、そのときだった。
「斎藤、これは拙者の育てた肉でござるよ」
「早い者勝ちという言葉を知らんのか」
「剣心、私のを分けてあげるわよ?」
「薫殿の心遣い有り難いでござる。しかし、コイツに育てた肉を奪われるのだけは嫌だ」
三十路手前の男の人とは思えないお肉の取り合いを始めた緋村剣心と斎藤一のやり取りに困っている神谷さん、その隣で野菜もしっかりと食べる明神君は偉いと思う。四乃森蒼紫は静かに二人の間をすり抜け、ずっと黙ったままお肉を食べている。
ああ、何処かでこのやり取りを見た事あると思ったら『ルパン三世』に登場したすき焼きを食べるシーンにあったんだ。
「景ももっと食べろよ」
「いや、あの、胃もたれが…」
前世の記憶を思い出している間に左之助さんが私のお椀にお肉を入れてくれていたけど。私は大食いファイターの人達みたく、一度にいっぱいご飯を食べられる訳じゃないんですよ?
きっと胃もたれすると思うんですよ。
「糸色殿、貴女はまだ育ち盛りだ。遠慮する必要はない、食べると良い」
「そうだぜ、そんな小柄だと大変だろう」
「肉ってのは食えば食うだけ身体に良いんだ」
「野菜も食べろよ、健康に良いからな」
しかし、左之助さんにお肉を渡そうとした瞬間、御庭番衆の方々は左之助さんを援護するように私にお肉を一杯食べるように勧めてきた。
……た、食べます。