「景、ちょっと良いか?」
ドクトル・バタフライの用意してくれた座高の低い椅子に座りつつ、また大きくなったお腹を撫でていると左之助さんに呼ばれ、ゆっくりと立ち上がって彼の傍に歩いて向かおうとしたものの、そのまま座っているように言われ、また座り直す。
「どうしたんですか」
「嗚呼、ちょっとな。景に聴いておきたい事があるんだが、その、なんだ」
「フフ、そんなに畏まって変な左之助さん」
「変って……いや、そのよ、子供の名前を決めようと思ってたんだよ。ただ、お前の家とオレの家に似合う名前が思い付き難くてよ……」
そう言って困ったように笑う左之助さんの首に腕を回して、中腰になる左之助さんの頭を優しく抱き締めながら「じゃあ、今回は私が名付けても良いですか?」とお願いすれば「しとりはオレが名付けたからな。今回は頼めるか?」と承諾してくれた。
お母さんとして名付ける事、やってみたかったんです。しとりの名前も素敵ですけど、左之助さんのお家は方角や方位を名前に混ぜていて、私のお家は絶に連なる一文字を加えるのが仕切りです。
方位なら仰角や偏波角も良いわけです。
偏波角に在る「
「うん、相楽偏はどうでしょう!」
「…良いな。元気に産まれて来いよ、ひとえ」
私の提案した名前を聞いて嬉しそうに笑い、優しく私のお腹に耳を当てて話し掛けている。しとりもよくしていますけど。二人ともいっぱいひとえの事を愛してくれそうで安心できる。
「ん!またやってる!ずるい!」
「早い者勝ちだぞ、しとり」
「しとりもききたい!」
「あらあら、喧嘩しちゃダメですよ?」
そう言ってみたもの、左之助さんとしとりは本気で喧嘩している訳ではなく、楽しそうに笑っている。まあ、喧嘩するほど仲が良いとも言いますからね。
それだけ左之助さんとしとりが仲良し親子なので私は嬉しいです。ただ、お腹の子を挟んで楽しく喧嘩するのはやめてほしい。
「しとり、反対側においで」
「ん!」
「前も似たような事あったな」
「ありましたねえ……」
ごく最近の出来事なので『特典』を使わずに思い出せるものの。また勝手に『特典』が発動しそうで不安になるときがあります。
それにしても、二人とも胎動を聴くのが好きなのかな?と首を傾げながら「お腹に負担が掛かるので、そろそろ離れてもらえますか?」とお願いをする。
「元気に産まれてくれよ」
「ん!げんきなってね!」
「フフ、がんばりますね♪︎」
そう言って私はお腹を優しく撫でる。