やはり闇乃武は左之助さんを狙っている。ごろつきなんていう人もいれば、武術を修めた人まで、全員ではないけれど。かなり大勢が左之助さんを倒して、名を売り込もうとしています。
そういうのは幕末最強の人斬り抜刀斎の緋村剣心に吶喊して貰えると助かるんですが、そろそろ産まれそうな子供のために騒動は起こして欲しくないです。
「ドクトル、どうです?」
「安定期に入っているが、如何せん騒動を起こす輩も増している。少しばかり山奥に移動していたほうが良いかも知れないね」
「そう、ですか…お願いします」
しとりのときもそうでしたけど。
私の出産時を狙う組織は多い。でも、錬金戦団は日本国内で派手に動ける立場ではないものの、ホムンクルスも出没する日本に戦士を派遣している。
その戦士はドクトル・バタフライや左之助さん、私の風貌や人相を写真に取っていたり、模写していた場合は本当に大変な事になります。
下手すると逃げる先にもいるということですし。
「ヴィクター達も既に移動しているが、母子に掛かる危機はないだろう。……しとり君、電光丸を突きつけるのはやめてくれたまえ」
「ん!しとりおねえちゃんだもん!」
「むっ、うむむ、仕方無い。しとり君、個魔の方と一緒に私の書いた地図のところまで、君のお母さんを守ってもらえるかな?」
「ん!まかせて!」
「すみません。ドクトル。しとりもありがとうね」
そうドクトル・バタフライに謝りながらもしとりに守ると言ってもらえる嬉しさに頬が緩んでしまう。私は優しい子のお母さんになれて幸せです。
ただ、たまにではあるけど。
しとりは左之助さんのように独占欲のようなものを醸し出す事があったりします。いえ、悪いことではないんですが、しとりも私に似て好きな人を取られたくないと思うようになるのかしら?
「結構、山奥だな。嬢ちゃんおぶるか?」
「んっ。しとり、おねえちゃんだもんね!」
「おお、頼りになるお姉ちゃんになりなさいな」
「ん!しとり、がんばる!」
フンスと胸を張って電光丸を掲げるしとり。お母さんとしては電光丸を鞘に納めて貰えると嬉しいです、その、下手したら守りの懐剣を持っているお母さんにも攻撃をしてきそうなのよね。
そう思いながらドクトル・バタフライの用意してくれた荷物を受け取り、個魔の方の影の中に私は呑み込まれる。やっぱり、この影の中は沈んでも溺れないプールのような感じです。
「しとり、電光丸を渡さなくていいのよ?」
「?」
不思議そうに首を傾げるしとりに苦笑しつつ、彼女の背中に背負えるように鞘の両端に紐を結び、ゆっくりと彼女に背負わせてあげる。
うん、かわいいです。