某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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喧嘩の花道 破

「……チッ。嗅ぎ付けやがったな」

 

「え?」

 

いきなり顔をしかめた左之助さんに戸惑うも彼は「すぐに終わらせるから待っててくれ」と言い、私としとりは窓枠を乗り越えて隠れ家の外に飛び出た左之助さんの事を追い掛け、窓の外を見る。

 

闇乃武。真っ黒な忍び装束を身に付け、両手の手甲は拳と手の甲を守る程度の大きさに収め、機動力と手首の関節可動を使いやすくした武装のみ。

 

具足や仕込み武器など暗器に準ずるものは身に付けていない戌亥番神の姿に目を見開く。私の知っている彼より筋肉の装甲は増し、無駄な脂肪を取り除いている。

 

打つ・投げる・極める三種の技術を総合して闇乃武に伝わる格闘術「術式無敵流」の戌亥番神が、雪の降り積もった先に佇んでいた。

 

「ハッハー!!再戦しに来たぜ、喧嘩屋!」

 

「何が再戦だ。此方は身重の女房がいんだぞ」

 

「……あのチビか。確かにアイツにはワリぃとは思うが、お前と再戦するために俺は清国の拳法使い共を相手に戦ってきたんだ。是が非でも受けろやァ!!」

 

がなるような怒号を上げ、駆け出す戌亥番神は両腕を交差させ、十字構え(クロスアームブロック)の格好で左之助さんに突撃していく。

 

「しゃらくせぇ!」

 

「掛かったな、馬鹿がッ!!」

 

カウンターぎみに繰り出された左之助さんの右ストレートをガードせず、両手を外側に向けて弾き出す様に戌亥番神は腕を振るった刹那、メキッ、バキッ…!と、イビツな音が耳の奥まで響いてきた。

 

左之助さんの右腕が、へし折れた────。

 

「グッ、てんめえッ…!」

 

「ハッハー!!どうだ、ご自慢の二重の極みを撃つにはへし折れた腕じゃ無理だろう!」

 

「左之助さん!!」

 

「問題ねえ、右腕が折れただけだ」

 

右腕が折れただけって、貴方の二重の極みは両の拳でしか使えないのに、況してや臨機応変・千変万化に攻撃の種類を変える総合格闘術の使い手ですよ。

 

「へえ、良い女に育ったな」

 

「馬鹿野郎、景は最初から良い女だよ」

 

「ハッ。確かに、てめぇが死に物狂いで取り戻そうとする女だ。縁もあんだけ固執するのが分かるが、俺はお前と決着付ける方が大事だぜ」

 

そう言うと戌亥番神は両の手を開き、投げ技と極め技を使えるように構えを変える。ドクトル・バタフライが居てくれれば助けてもらえるのにっ。

 

……いえ、彼に頼りすぎるのは良くない。

 

「もしものときは、私が……私がっ」

 

「母者、心配しすぎだよ。アンタは嬢ちゃんと一緒に安心して見守っておけばいい」

 

そう言うと個魔の方は静かに影に戻った。

 

 

 

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