医療器具は整っている上、整理整頓、清潔な山奥の病室は私の身体に合っているのか。呼吸も掠れたり、心肺が痛くなることも少ないです。
それにしても戌亥番神は二度も左之助さんに負けているというのに、まだ諦めずにリベンジ・マッチを申し込んで帰っていったものの、今度も左之助さんは闇乃武の襲撃を受けるということになる。
三角巾で右手を吊るしている左之助さんは「二度と来るな」と文句を言っていたけど。久しぶりに純粋に殴り合いの喧嘩を楽しめて満足げだ。
緋村剣心、四乃森蒼紫、不破信二、かつて左之助さんが敗れてしまった三人にもいつか左之助さんは勝負を申し込み、勝つことは出来るのだろうか。
いえ、そもそも不破に勝つ方法があるのかしら?
「(四百年不敗の一族。いずれ陸奥九十九によって消えるとはいえど左之助さんや緋村さんなんていう強敵を野放しにするのは絶対に思えません)」
「景、考え事か?」
「考え事なんでしょうか、これは?」
「まあ、オレはお前が怪我せず悲しまないなら何でも良いがな。それよりオッサンが腹の子が生まれたら欧州に行かないかって相談してたぞ」
そういえば
───だけど。「ゴールデンカムイ」に出るんですよね。ジャック・ザ・リッパーを名乗り、その通りに行動を繰り返している変態さん。
正直、あれに関わるのは本当にイヤです。
「景?」
「いえ、その、船ですよね」
「……ああ、そうだったな。酔わねえようにオッサンに身体を粉で浮かせてもらうか?」
「さすがに、ドクトルが可哀想ですよ」
「そうか。オレは良いと思うんだがな…」
骨の位置を補強して核鉄を巻き付けた右腕を吊るして話す左之助さんは「生まれたら連れていってやりてえな」と笑ってくれたけれど。
その頃にはもう二十五歳を越えていそうですね。
「おさんぽいくの?」
「フフ、違いますよぉ?しとりとこの子を連れてお外の国に行ってみようかと話していたんです」
「ん!おそと!!」
「おっ、しとりは乗り気だな」
嬉しそうに笑う彼に釣られて、私もクスクスと笑ってしまう。しとりも外国に行くのが楽しみなら、私も一緒に行きたいです。
出来ることなら安全なときに行きたいですけど。