みんなと食事を終えるなり、緋村剣心は左之助さん達を引き連れて「白べこ」の外に止まっていた馬車に乗り込み、大阪へと出立した。御庭番衆は事前に聞いていたらしくもう京都大火を阻止する為の準備を始めている。
私も出来るだけ手伝っているけれど。
如何せん体力の無さに足手まといになってしまっている現状に歯痒さを感じながら攻め込んできた志々雄真実の尖兵を「葵屋」の二階から見下ろす。
「糸色ちゃんや、余り気負うでない。人には向き不向きがある様に今は糸色ちゃんに出来ることをしていけば良いんじゃよ」
「……柏崎さん、分かりました!」
もう攻め込まれている状況で悠長に物作りに耽っている訳にはいかない。それなら手元にある道具を使って神谷さん達の手助けを行えば良いんだ。
硝酸、硫酸、石鹸、ニトログリセリンを作るのに必要な材料は少しだけ残っているだけ。でも、このままダイナマイトを作ったら斎藤一に怒られる。
「柏崎さん、厨房をお借りしても良いですか?」
「勿論、構わんよ。ワシはちと操ちゃん達を手伝ってくるが、外に出るでないぞ」
「はい。分かってます、お気をつけて」
窓枠を乗り越えて志々雄真実一派と警官隊の混戦に乗り込んでいく柏崎念至を見送り、私は厨房なら必ずある唐辛子をあるだけ全部刻み、擂り鉢で塩を加えながら粉々に擂り潰して粉末状にしたものを割れた卵の殻に流す。
あとは和紙で蓋をしたら終わり。即席の目潰しだから失明する可能性は限り無く低いから心配はないけど。唐辛子は目に入ったらかなり痛い。
綺麗に卵の殻を割ってくれていたおかげで沢山の目潰しを作ることができ、目潰しを籠に詰め込んで二階に戻り、柏崎念至のように窓枠を乗り越え……いや、その前に手すりと身体を帯で縛ろう。
多分、落ちるかも知れない。
「んえいっ!」
籠を瓦の上に置いて一つずつ投げまくる。
神谷さん達のところに飛ばないように腕を必死に振りながら、覆面を着けた志々雄真実一派の尖兵に向かって、兎に角、頑張って目潰しを投げつける。
「この小娘がッ!!」
「ひっ、来ないで下さい!!」
バサリと蝙蝠のようなマントを纏った男が飛び掛かってくる光景に思わず、私は目を瞑りながら籠ごと目潰しを男に向かって投げつけてしまった。
…………あれ?襲われない?
恐る恐る、ゆっくりお目を開けると「葵屋」の店先に蝙蝠のような男が倒れ込んでいた。し、死んじゃったかな?と不安に思いつつ、蝙蝠のような男を見下ろす。
あっ、ピクって動いた。
「良かった、生きてた…」
ほっとする私に呆れた視線を向ける御庭番衆の方々と違って巻町さんは「今の投げは最高に良かったわよ!」と言い、親指を突き立てグッドサインを送ってくれた。