左之助さんが私の顔や手を握ることが増えた。嬉しいですけど、お仕事をしているときに接吻するのはやめましょう。しとりも真似しちゃいます。
「左之助さん、どうしたんですか?」
よしよしと仕事の手を止めて、彼の事を抱き締めて頭を撫でていると「あるヤツにお前が病気で死ぬって言われたんだ」と聞かされ、戸惑う。でも、それは私は死ぬような病気に掛かるのかな?という気持ちだ。
そもそもドクトル・バタフライ以上の科学者の存在しない明治時代に触診もしていない相手が、私の体調の事をどうやって知り得るのかしら?
その事を伝えると目を見開き、左之助さんは頭を抱えた。どうやら私を心配するあまり、鵜呑みにしちゃったようですね。まあ、そういうところも可愛いですね。
「……悪い、困らせたよな」
「フフ、良いんですよ。私は左之助さんが大好きですから、こうして触れ合えるのは幸せです。ただ、相談して下さいね?」
「嗚呼、二度と騙されねえよ」
「それにしても左之助さんに嘘を吐くなんて酷い人です。しとりにも注意するように話しておかないと、また連れて帰って来そうですねえ」
私の言葉に左之助さんも苦笑いを浮かべて、しとりが個魔の方、ドンと親分を引き連れている光景に何も混ざっていないので問題ないけど。
「ん!ただいま!」
「お帰りなさい、しとり」
「お帰り、しとり」
「ん!つかまえた、みて!」
捕まえた。その言葉に反応して私の事を守るように懐剣は結界を展開し、しとりの事を拒んでしまい、慌てて懐剣を手離してしとりを抱き締める。
「ごめんなさい!怪我はしていない!?」
「ん?んおわー!びりびりしたーー」
「虫は逃がそうな。母ちゃんは虫が苦手なんだ」
「ん!むしじゃないもん!」
ぷくーっと頬っぺたを膨らませて怒るしとりの頭を優しく撫でてながら「じゃあ、何を捕まえたの?」と聞けば手のひらを開いて、しとりは見せてくれた。
しかし、しとりの手のひらには何もなかった。
「ん?ない!」
「個魔の方、しとりは何を捕まえたんですか?」
「雪だよ。もう夏なのに珍しく降っていた雪を掴まえて、母者にプレゼントしたかったんだってさ」
「あらあら、それは」
素敵なプレゼントをくれようとしたんですね。お母さんはとっても嬉しいです。でも、しとりが傍に居てくれる方がお母さんはもっと幸せですよ。
「ごめんね?」
「フフ、しとりは可愛いので許します♪︎」
よしよしと彼女の事を抱き締めて、その可愛らしい頭を優しく撫でてあげる。今度はみんなで雪を見に行きましょうね。