ススハムの持ってきてくれた山菜をお湯で軽く茹でて、水気を絞った後、鰹節や炒り胡麻を振りかけたものを味見してみる。お摘まみにするなら、もう少しだけ塩気を増やした方が良いかな。
そう考えながらお皿に移し、お盆に乗せて運ぶ。
「左之助さん、お酌しますね」
「ん、すまねえな」
ちゃぶ台に山菜のお浸しを置き、お猪口にお酒を注ぎ、しとりも眠る病室の端で左之助さんの晩酌のお供をする。十五夜の月ですねえ。
のんびりと左之助さんに掛けられた嘘を晴らし、ディーン・メーストルの偽物の情報を解体していく。ドクトル・バタフライはまだ北海道に居ると思われる彼を捜索しているが、見つかっていない。
おそらく、もう彼は本土に渡っている。
「私はお婆ちゃんになっても左之助さんと一緒に居ますから心配しないで下さい。それに、いざとなったらという時のために秘策は用意しています」
「……そうか」
「えぇ、そうなんです」
そう言って左之助さんの頭を優しく撫でてあげる。
愛して貰えるのは幸せです。
ただ、私を心配する余り他人の言葉を鵜呑みにするのはダメです。そもそも左之助さんは真っ直ぐ歩いていける人なんですから、他人に言われて曲げるのは「らしくない」と言えれば良いんですけど。
人間は移ろいやすく考えも変わりますからね。
「なあ、景」
「はい」
「オレはお前を守れてるのか?」
「……フフ、しっかりと左之助さんに守って貰っていますよ。だって、こうして私を愛して、やや子を産ませてくれるんですさら」
「……そうか。守れてんだな」
「はい。守っていますよ」
にっこりと微笑んで左之助さんを抱き締める。これからもずっと守って欲しいですけど。私が生きている限り、世界の拡大と複合化は続いていきます。
左之助さんに頼ってばかりで申し訳ないです。
「いつか、腹の子も一緒に五人と二匹で飯を囲んで食えるようになりてえな」
「そうですねえ」
ちゃんと個魔の方も入っている事に嬉しく思っていると顔を真っ赤にして照れ臭そうに笑っている個魔の方がしとりの近くに現れる。
どうやら聞かれていたみたいだ。
「私を辱しめて、楽しいのか?」
「さあ、どうでしょう♪︎」
「ん?個魔の方がいるのか?」
私のクスクスと笑う声に反応し、左之助さんが手を動かした瞬間、ゾワリとした感覚に襲われて顔を赤くしながら個魔の方は影に潜り込んでしまった。
「左之助さん、手を刺すのはダメです」
「オレは何を触ったんだ?」
そんなこと言えるわけないでしょう。