「御初に御目に掛かる。私は志葉家当主、志葉誠輔と申す者。御主達に聞きたいことがあって北海道の地まで参った次第だ」
「Sorry。まさか、ここまで私達に対して執念深い男だと思わなくてね」
兜の折り紙の家紋を背負った快活とした青年と、その後ろに控える男の人に私は見覚えを感じる。まあ、志葉家と聞けば簡単に『侍戦隊シンケンジャー』の登場人物だと分かるけれど。
私の使った一度のモヂカラを頼りにやって来たのかと戦々恐々してしまう。だって、このままだと私の大切な子供達が外道衆と戦うことになる。
それだけはイヤです。
「池波君、貴方が教えたの?」
「……某は殿の侍でございます」
「そう、帰って貰えますか?見て分かると思いますけど、もうすぐ大事なやや子が産まれるんです。それに私は怖いことに関わるのはイヤです」
私の言葉に納得して頷く志葉誠輔と申し訳なさそうに片膝を地面につけ、彼の後ろに控える池波君。ずっと昔の、お父様のお仕事に着いていったときに出会った男の子が、今は寡黙な侍になっている。
「ドクトル、貴方も逃げることが出来るのに逃げないのは良くないことですよ?」
「うむ、その通りだね」
そう言うとドクトル・バタフライは笑って縄を千切り、チャフを巻き上げて二人の事を都市部まで追い返してしまった。ショドウフォン、やっぱり無闇に使うには危険すぎますね。
「ん!母ちゃん」
「しとり、まだ出てはダメですよ」
「むう」
「可愛く怒ってもダメです」
よしよしとしとりの頭を優しく撫でてあげながらドクトル・バタフライの研究所に入り、しとりやお腹の子を危ない出来事に巻き込むのは止めて欲しいと切実に願うばかりです。
それにしても、志葉家と池波家の来訪は予想外でした。どうにか誤魔化しておけば、左之助さんにバレることはないでしょうけど。
知らない男の人が家を訪ねてきたとは言えませんし、ほんの少しだけ悩んでしまう。昨晩のお酌したときに話した翌日にこんなことになっている。
全部、ドクトル・バタフライのせいですね。
「母者は本当に巻き込まれ体質だな。その内、仮面ライダーやウルトラマンとかそういうのにも巻き込まれたりするんじゃないのか?」
「止めて下さい。こわいです」
仮面ライダーなんかに繋がったら世界は終わりです。あんな恐ろしくて怖い世界まで混ざったら、もう私は歩くことも出来なくなります。
そうなったら、左之助さんやしとり達にものすごく迷惑を掛けてしまうし、私もイヤなんです。