「翔ぶが如く!翔ぶが如く!目指すは大阪!!」
四人の男が乗るには窮屈な馬車の屋根に乗り、オレの雄叫びに馬の駆ける速さも上げている気がするほどに勢いを増す馬車の天井を切っ先が突き破る。
「危ねえだろうが、斎藤!?」
どうせ犯人は斎藤だろうと文句を言うために窓枠に逆さまに張り付いて車内の奴らを睨み付ける。剣心は問題ないが、残りの奴らは平然と刺してきやがる。
「チッ。外したか」
「斎藤、狙うなら右に二度修正しておけ」
「お、お主達は本当に容赦ないでござるな」
剣心の諌める言葉にオレも渋々と屋根の上に座り直して斎藤の話を黙って聞く。京都には薫や弥彦もいる、景のヤツも隠れることに徹している筈だ。
大体志々雄真実のヤツも時と場合を考えろってんだ。こちとら東京で祝言を挙げる予定だったっていうのに、とんでもねえ面倒事を仕出かしやがって。
オレの呟いていた文句が聞こえていたのか。剣心は「おろ。それなら早く帰って、一緒に祝うでござるよ」と言ってくれた。この中で優しいのはお前だけだぜ。
「っと。着いたのか?」
屋根を降りて馬車の荷台に乗せていた斬馬刀を担ぎ、真っ暗な海面に浮かぶ月、何隻も揺れ動く海を見据える。この中から探すのか、手間取ってる暇はねえが、どうすりゃいいんだ?
「夜明け前には辿り着けたが、どの船か見えるか?」
「嗚呼、見える。こんな時間に蒸気を出して出港しようとしている船はアレだけだ」
「今から船を探していては追い付けんぞ」
蒼紫の言う通りだが、斎藤はどうするつもりだ。
「相楽、アレを使うぞ」
「……アレか!?」
「あれ?」
そういえば剣心と蒼紫には教えてなかったなと考えながら鞄の中に詰め込んでいた筒を取り出す。景がオレのために作ってくれた特製の爆弾────。
ダイナマイトだ。
「けどよぉ…これ届くのか?」
「阿呆が。当たる距離に近づけば良いだけだ」
「観柳の時もそうだが、糸色は抜けているのか」
二人の言葉にムカつきつつ、斎藤は煙草の箱から一つ紙巻き煙草を取り出し、ゆっくりと外来品のライターを使って火を点け、そのままダイナマイトの導火線に煙草の火を押し付けた。
「噴ッ!!!」
「流石は新撰組、投擲もお手の物か」
綺麗に海面を一度跳ねたダイナマイトはそのまま志々雄真実達の乗っている船の近くに沈み、湿気て不発に終わったかと思った、そのときだった。
ドゴオォォーーーーンッッッ!!!!!!
凄まじい爆発音と水飛沫、粉々に砕ける船尾の一部にオレ達は唖然としてしまった。剣心に至っては爆発の余波で軽く後ろに押されてやがった。
「よく分からんが出港は阻止したな。良し」
「良しではござらんが!?」
オレは斎藤に突っ掛かる剣心を眺めつつ、真剣に鞄の中身を見下ろす蒼紫も警戒する。流石に猫ババするとは思えねえが、御庭番衆なんだよなぁ……。