「やあ、パパだよ!そして、じいじだよ!」
あまり年を取っているように見えないお父様の訪問に困惑する私を他所に左之助さんは当たり前のように我が家にお父様を招き入れ、居間に案内する。
お母様は来ていないご様子です。
まさか一人でやって来たのかと困惑しながら、左之助さんとしとりの隣に腰掛ける。お父様は私の大きくなったお腹を見て、微笑ましそうに顔を緩める。
「じいじ!」
「イエス!じいじだよ、しとりちゃん!」
でろでろに甘えた声を出すお父様に苦笑を浮かべつつ、どうしてやって来たのかを問い掛ける。お母様を溺愛するお父様がたった一人で北海道の娘家族の家までやって来るのはおかしいです。
「景、志葉家の当主に会ったそうだね」
「……しば?この前の話してくれなかったヤツか」
「さ、左之助さん、怒っちゃイヤです」
そう言って左之助さんにお願いして、今回は許して貰えたものの。どうして、お父様が志葉家の事を知っているのだろうかと首を傾げてしまう。
「糸色は四百年は続く家系だ。そういう事柄に精通しているというのもあるけど。幾度か僕も妖怪に関わっているんだ」
「ん!しとりもよーかいすき!」
「ハハハ、それは素敵だろう。景、僕は君の父親として霊や妖に関わる事柄に巻き込むつもりはなかったし、お頂だって心配している。
「お父様は心配症です。私はしとりやお腹の子、左之助さんと平和に暮らしていたいので、怖いことに関わるつもりはありませんよ」
私の言葉に安堵するお父様のお膝に座ったしとりは可愛らしく小首を傾げ、お父様の事を見上げている。しとりを優しく撫でる顔は昔と変わりませんね。
「話についていけねえんだが、要は景を戦わせようとする奴らがいるんだな?オレがぶっ殺してくれば何の問題も無くなるわけか」
「コラ、ダメだぞ左之助君!しとりちゃんがいるのに乱暴な言葉を言うのは!」
「す、すまねえ」
「しとりしってるもん!」
「何を知ってるんですか?」
「母ちゃん、ゆるしていってるのにいじめてた!」
「……あ、あー、おう」
わあ、よくある展開ですけど。まさかの実の父親が、お父様がいるときに起こるなんて予想外すぎて、左之助さんもお父様も戸惑っていますよ。
どうしましょうか、この空気?
「しとり、おやつにしましょうか」
「ん!たべる!」
「フフ、一緒に取りに行きましょうね」
そう言って私はしとりと二人で台所に向かい、お父様の話し相手を左之助さんにお願いする。