ドクトル・バタフライによる「ひみつ道具」「発明品」の設計図製作はいつも以上に忙しなく、既にもう三冊も仕上げているというのに、まだ書くように彼は私に頼んでくるのです。
あの人は私をどうしたいのかしら?
「うぅ、腱鞘炎になりそうです」
しくしくと左手首を優しく擦りつつ目尻に涙を溜めて、そう呟く私を眺めるしとりは不思議そうに首を傾げ、カリカリとお煎餅を食べ始める。
「流石は糸色君だ。完璧に仕上げている」
「まあ、設計図は頭の中にありますし。地続きの現在進行形で『前世の記憶の保持』も拡張・拡大を続けていて、今はもう飛行型軽自動車なんてモノも見えたりしますよ。描きませんけど」
「私達の前世は必ずしも時代は一致しないからね。実に面白くステキな世界になりそうだ」
そう言って笑うドクトル・バタフライは私より前世も今世も歳上の男性だけれど。趣味と仕事に生きるタイプの生真面目な人間(ホムンクルス)だと思う。
そもそも子供のために大百科を遺すのは私も賛成します。しかし、こうも武器を描くように指示するのはどういうつもりなんですか。
「『光子集束単身剣』って、ただのビームサーベルやライトセーバーを漢字に書き換えただけですし。電光丸のサーベル版、『チャンバラ刀』に『冥府刀』まで書く必要はありませんよね?」
「浪漫はあるだろう」
「私、やっぱり男の人の浪漫は分かりません」
私はドクトル・バタフライの差し出す『光子力研究書』や『空中元素固定装置』、『火炎ステッキ』なんていうものを遺そうとするのはダメです。
世界規模の危機を起こすつもりですか。
「ジャイアントロボもダメでもマジンガーZはいけると思うのだがダメなのかね?それならメタルヒーローとかどうだね」
「……ドクトル、私も怒るんですよ?」
「HAHAHA。君が怒っても怖くはないよ。だが、身重の君に負担を掛けすぎてしまった。申し訳ない、お詫びにこれを頼みたい」
私にそう謝りながら彼の差し出してきたのは『ヒーローベルト』のカタログだった。しかも手書きの無駄に凝っている見た目に怪訝そうにドクトル・バタフライの事を見上げる。
「ひみつ道具を組み合わせて作ることは出来ると思うんだよ。『着せ替えカメラ』と『変身セット』を合わせて、瞬間的に変身する空間を作ったり」
「…………」
「いや、そうだね、すまない」
確かに発想は面白いですけど。ヒーローに変身しても勇気がなければ動けません。例え動けても怖さに負け、大怪我を負ってしまうかも知れないんです。
私だって本当は誰にも傷付いて欲しくないんです。