「左之助さん、お腹撫でます?」
「撫でる」
「ん!しとりもする!」
そう言うとしとりも手を大きく持ち上げ、私のお腹に優しく顔をくっ付ける。撫でないの?と聞こうかと思ったけれど、彼女も楽しそうなので黙っておきましょう。
ゆっくりと私のお腹を撫でている左之助さんはしとりの頭も撫でていますし、頭を撫でるのも本当に手慣れてきましたね。
流石は左之助さんです。
「ぬはははっ!今日も家族円満だな!」
「二瓶のオッサン、来たのか」
「おう。左之助も元気そうだな。今日はウサギや鹿を燻製にして貰いに来たんだ。嗚呼、それとちょいと面白いヤツを見つけたんでな」
「面白いヤツ?」
唐突にやって来た二瓶鉄造に驚きつつ、私は燻製用の木箱を取りに台所へ向かい、燻製用の木屑に火鉢の火を移して、中庭で準備を始める。金網に置くもの、釣り針に引っ掛けるもの、それぞれに塩を塗り込んでおき、ゆっくりと落とさないように蓋を閉じる。
それから手を綺麗に石鹸や消毒液で洗い、戸棚のお菓子を取り出していると、いつの間にか私の傍にやって来ていたしとりがお菓子を見詰めている。
「……お昼ごはんが入らなくなるから少しよ?」
「ん!!」
「母者、私もくれ」
「はいはい。落とさないようにね」
二人にお菓子の入った紙袋を手渡して、嬉しそうに居間に戻る後ろ姿を眺めながら、本当に大変なことばかりで嬉しくなります。
湯呑みをお盆に乗せてお菓子と一緒に居間に持っていき、燻製用の木箱を見詰める二瓶鉄造と左之助さんにドライフルーツを練り込んで作ったパンを差し出す。
ドライフルーツは食べやすいので好きです。まあ、食べ過ぎると危ないので適量にしていますし、パンに練り込んでおけば山の中に居ても食べられますからね。
「ぬはははっ。果物を乾物にしてパンに混ぜているのか、酸味と甘味が口内に広がってくる!」
「もう少し時間を置けば果物の風味がパンに移りますよ、それにシュトーレンは長期間の保存食になります。大体、四週間ほど保管できますね」
「ホウ。熊撃ちやマタギにとっちゃメシの蓄えが増えるのは有り難い話だが、こんな美味いものを俺に教えても良かったのか?」
「……二瓶さん、パン作り出来ます?」
「ぬはははっ!無理だな、女房に作って貰う!」
豪快に笑っているけど。
それだと奥さんに負担を掛けすぎているのでは?と思いながら、チョコレートを溶かし入れたココアをしとりと個魔の方は美味しそうに飲んでいる。
私はいつも通りの温かいお茶です。