「景ちゃんさん、ちょっといい?」
「はい。どうしました?」
「相談があるんだけどさ」
くるくると人差し指で髪の毛を弄っている久保田さんを寝室に招き入れ、一緒に着いてこようとした井上君と長谷川君は物凄く睨まれて退室していく。
聞き耳を立てているといけないので、仕方なくショドウフォンを取り出して『防』の文字を描き、しっかりと防音室の様に音漏れしないようにする。
こうしておけば安心です。正直、この力は使う度に私の『特典』と呼応し、相性を高め合っている気がして不安を煽り募らせる。
「改めて、教えてくれる?」
「その、さ、二人とも私の事好きじゃん」
「好きって言っていましたねえ」
私は左之助さんに又聞きした程度ですが。
闇乃武を相手に啖呵を切るなんて凄いことをしたわけですし、左之助さんに影響されて重たい感情を向けているのは何となく分かっていましたけど。
「相談は、どっちか決められないですか?」
「いや、そうじゃないのよ。二人ともすごい仕事帰りに奢ってくれるし、綺麗なキラキラしたものを贈ってくれるんだけど。だんだんと狂気を感じるのよね」
「(二人とも独占欲強すぎる余り久保田さんに怖がられてるなあ……私もアメリカに渡米したとき、左之助さんに凄く……コホン、止めておきましょう)」
「私も二人は嫌いじゃないけど。何か怖くて…」
「久保田さん、必ずしも愛に応える必要はありませんよ。私は色々な人に狙われたり襲われたりしましたけど。ずっと愛しているのは左之助さんだけです」
私のその言葉に「景ちゃんさんは人妻だから浮気嫌いなのは知っているわよ」と言われ。まあ、確かに人妻の言葉は聞きにくいわよね。
「どんな調味料にも食材にも勝るものがある。それは料理を作る人の愛情です。キラキラした恋も人生に於ける素敵な調味料だけど。だからって無理に受け入れず、貴女の思う事を素直に伝えることもまた愛情ですよ」
「私の気持ち……うん、ありがとう」
「フフ、良いんですよぉ」
愛や恋は男女の関係を煌びやかにする調味料。その正体にお互いに気付けたら、きっと素敵な事になるでしょうけど。押し付けるのはダメです。
満足して襖を開けた瞬間、井上君と長谷川君のふたりが聞き耳を立てた格好で一緒にいた。しとりも真似しなくていいのよ?と言いつつ、私の布団にやって来た彼女を優しく抱き締めて撫でてあげる。
全く、悪いことを真似しちゃ駄目よ?
「あんた達、ほんっとに私の事好きね…」
そう呆れながらも嬉しそうに笑った。