小さな盃一杯の半分ほど程度の予定で話していた筈なのに、サンピタラカムイ様は徳利に一杯注いだ神酒を差し出してきた。にっこりと笑っているので悪意はないのでしょうが、お酒は苦手なんです。
お猪口なら頑張って飲みますけど。
「んッ…んッ…!」
チビチビとお猪口の底が浸かる程度に注いだ神酒を頑張って飲んでいると左之助さんとサンピタラカムイ様の二人に「そこまで苦手だったのか」という視線を受ける。お酒なんて料理や発明の時だけです。
第一、私は物書きなんですがお酒なんて飲んだら酔って危ないものを描いたらどうするんですか。ものすごく危険な世界に繋がる可能性だってある。
「……ひくっ…もう、むりれふ…」
『一杯分にも達しておらんぞ』
「まさか景がここまで酒に弱いなんてな」
「弱くないです、苦手なんです」
そう言って神酒のおかげで少しだけ身体の重さと苦しさは消えたものの、謎の高揚感と多幸感に包まれて左之助さんに身体を擦り寄せてみる。
「あなた、しゅきい」
「んぶッ…!」
『ホッホッ、酔っとるな』
「酔ってませんよぉ~、あなたの景はいつでも愛しているのです」
うりうりと笑って左之助さんの頬っぺたを突いているのに、あんまり反応してくれず、ムッとなりながらペチペチと彼の肩を叩き、此方を向くように訴える。
「景、落ち着け、な?」
「わらひは落ち着いてましゅっ、あなたがぁ…ぎゅうーってしてくれたら、もっとわらひら落ち着くかもぉ?です!」
左之助さんの腕に抱きついて、そう伝えると顔を赤くして照れている左之助さんが可愛くて、よしよしと頭を抱き締めて撫でてあげる。あれ?私のほうが抱き締めていますね、抱き締めてほしかったのに残念です。
「……景は秘密とかあるか?」
「ひみつれすか?ウ~ン、ないれふ。あなたがしゅきなので秘密なんてないのだぁ?です!」
「そ、そうか。景は良い女房だぜ」
「んふふ、わらひもあなたがしゅきっ♪︎愛していますよぉ…ずっと、いっしょにいましょうねぇ」
そう言いながら左之助さんに手渡されたお水を飲んだ瞬間、私はさっきまで自分が何を口走っていたのかを思い出す。『特典』の効果で忘れることはなく、自分の言葉を思い返して顔が熱くなる。
「……今のは忘れて下さい」
「戻るのが早いな」
しかし、本当に恥ずかしいですね。
まさか私は酔うとものすごい甘え上戸になるなんて知りませんでした。いえ、しるつもりもなかったんですけど。さすがに、これは恥ずかしすぎますね。